牛乳による骨量低下で骨折率1.6倍!4つの原因とは?

牛乳の飲み過ぎ

 

骨を丈夫にするために飲んでいた牛乳なのに!
まさか、骨量が低下して骨折率が高まっていたとは。。。

牛乳を飲み過ぎると、骨量や骨密度が低下して、骨折率が高まることが分かっています。しかしある成分をとることで、骨密度が上がることも分かってきました。 

牛乳が骨折率を高める!?

医学5大誌の1つであるBMJに「牛乳を1日3杯以上飲む人は、骨折発生率と死亡率が上昇する」という衝撃的な報告書が掲載されました。(2014,349,BMJ,Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men:cohort studies)

骨折と牛乳の調査内容

調査は、スウェーデン中部に住む10万6千人(女性6万1千人、男性4万5千人)の中高年を対象に、女性は20年、男性は11年間追跡して行われました。

骨折と牛乳の調査結果

牛乳を1日3杯以上飲む女性は、1日1杯未満の女性よりも、骨折1.16倍大腿骨頸部骨折1.6倍全死亡率1.93倍心血管死1.90倍がん1.44倍と高いという調査結果が発表されました。また男性よりも女性の方が、骨量が低下しておりリスクが高いことも分かりました。

反対の意見

骨量や骨密度を上げるために、牛乳を推奨する医師なども多くいます。その根拠となる文献も数多くだされていますが、「身体にはカルシウムが必要だから、牛乳を飲みましょう」と戦後の常識を前提にしたものが多く、対象者がどのような生活や食事をしているか?という部分にあまり触れていないようです。

近年欧米では、牛乳の飲み過ぎが「骨粗しょう症」を増加させるとして注意を呼び掛けています。しかし牛乳のとり方によっては、骨量や骨密度の増加が期待できます。詳細は記事の後半でお伝えします。

牛乳で骨折率が高まる4つの理由

なぜ牛乳の飲み過ぎで、骨折率が高まるのでしょうか?なぜ牛乳は骨量や骨密度を低下させるのでしょうか?その原因として3つのことが考えられます。

  1. 牛乳の栄養バランス
  2. 牛乳の吸収性の高さ
  3. カルシウムの悪玉化
  4. 牛乳分解酵素の欠如

牛乳の栄養バランス

カルシウムの役割には、骨の形成、筋肉収縮、神経伝達、ホルモン分泌などがあります。そのカルシウムを正常に機能させるには「マグネシウム」が不可欠で、カルシウム濃度もコントロールしています。

牛乳中にマグネシウムは微量しか含まれず、カルシウム過多の状態になります。それを尿で排出させ減少させますが、同時にマグネシウムも流出させます。また運動によっても大量のマグネシウムが消費され、発汗でも流出します。さらにマグネシウムは、骨形成に重要なビタミンDの活性にも関わっています。

マグネシウムが不足することで、体内にカルシウムがあふれる「カルシウム・パラドックス」が発生し、アレルギー、筋肉の痙攣や鈍化、イライラの増大、骨密度低下、集中力などの脳機能低下の原因になります。

またカルシウムを骨化するには「アルカリフォスファーゼ」という酵素が必要で、その活性化には「カルシウム:マグネシウム」=「2:1」のマグネシウムが必要ですが、日本人の多くが不足しています。

牛乳の吸収性の高さ

牛乳を飲むことで起こる血中カルシウム濃度の急上昇が、骨量低下の原因になっています。

血中カルシウム率の急上昇

血中カルシウム減少

カルシウムは血中に1%濃度で存在していて、血液の酸性とアルカリ性のバランス(pH)をとっています。このバランスはとても重要で、もしこれが崩れると生命にかかわる重大な障害を引き起こします。

通常の食品からカルシウムをとる場合は、高分子ため(吸収が悪い)ゆっくりと吸収されます。体に負担(急激な変化)をかけことなく、カルシウム血中濃度1%が維持されるのです。

カルシウムの過剰排出

血中カルシウム増加

しかし吸収率の高い(低分子)牛乳をとることで、血中カルシウム率が急上昇し、血液がアルカリ性になります。それを中性にするために、カルシウムを一気に排出しようとします。

勢いよく排出されるため、血中カルシウム濃度は1%を切り、血液が酸性になります。さらにカルシウム不足は、筋肉機能を低下させ、ホルモンや神経のバランスも崩します

今度は急いでカルシウムを補給しなくてはなりません。カルシウムは骨を分解して供給されるため、骨量や骨密度の低下につながるのです。この恒常性の維持機能(ホメオスタシス)は、生命にかかわる重要度で判断するため、骨量バランスよりも血中成分濃度を優先します。

カルシウムの悪玉化2つの原因

カルシウムの悪玉化は、骨を分解する「脱灰」を促進させ、再石灰化による「骨形成」を上回ります。また「異所性石灰化」を発生させ、本来のカルシウムの居場所とは違う血管や内臓に付着し硬化させます。

この悪玉カルシウムの発生原因の1つは「マグネシウム不足」です。カルシウムの濃度や働きは、マグネシウムがコントロールしていますが、不足することで暴走をはじめます。もうひとつは動物性タンパク質の過剰摂取です。肉や乳製品が血液が酸性化させ、それを中和させるために骨からカルシウムを分解します。

スポーツ選手に多いマグネシウム不足によるカルシウムの悪玉化

お腹がゴロゴロする日本人

牛乳でお腹がゴロゴロすることはありませんか?特に子供のころに牛乳を飲んだことのない高齢者に多いようで、その割合は日本人の8割ともいわれ、欧米人とは大きく異なります。

これは牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)を分解する酵素「ラクターゼ」が欠損していることで起こります。乳糖の消化酵素がないため、消化吸収されることなく大腸まで達し、大腸細菌により発酵し、お腹がゴロゴロする、お腹が張る、下痢をする、といった乳糖不耐症状がでます。

骨量を増やす3つのポイント

牛乳とカルシウムについて説明してきましたが、骨量を増やすために効果的な3つの方法をご紹介します。

  1. マグネシウムを摂取する
  2. ファイバープロテインを摂取する
  3. 適度な運動と日光を浴びる

マグネシウムを摂取する

マグネシウムは記事にも書いたとおり、カルシウムを正常に機能させるキーマンです。しかし運動による消耗、発汗による流出、マグネシウムが少ない食事習慣により、多くの国民が不足傾向にあります。

その改善には、食生活の見直しが必要です。マグネシウムを多く含む大豆食品、魚介類、ナッツ類などを多く摂取することで改善できます。サプリメントで摂取する場合は、総合ミネラルを利用してください。単一ミネラルの過剰摂取は、健康被害をもたらすことがあります。総合であれば余分な成分は排出されます。

ファイバープロテインの摂取

骨の基礎は、Ⅰ型コラーゲンなどの線維状タンパク質(ファイバープロテイン)によって構成されます。それがカルシウムが定着する土台となり骨ができます。このタンパク質の密度が骨密度に影響します。

カルシウムはリン酸カルシウムとなり、リン酸マグネシウム、Ⅰ型コラーゲンと結びつき「アパタイト」として骨を構成します。つまりⅠ型コラーゲンが不足すると、カルシウムが骨に定着できないのです。

「骨折を早く治す!治療期間を短縮させる最高の治療方法!」

運動で骨に負荷をかける

骨は負荷をかけることで骨量がアップします。どれだけ栄養をとっても、運動しなければ骨量は低下します。栄養は必要とされないところには供給されません。

宇宙飛行士が地球に戻ると、歩けないほど骨量が低下しています。無重力の宇宙では、骨にほとんど負荷がかかりません。そのため宇宙飛行士はコラーゲンを積極的に摂取するといいます。

それでも牛乳を使う方へ

牛乳を調理で使うことをおすすめします。特に魚介系のスープやシチューなどに使うことで、相乗効果を得ることができます。牛乳を使うポイントは「温める」「調理する」「乳製品でとる」です。

牛乳を温める!

牛乳は「リラックス効果」があることでも知られています。牛乳に含まれる必須アミノ酸「トリプトファン」が、脳内物質「セロトニン」に変化しリラックス効果をもたらします。またセロトニンは、安眠ホルモン「メラトニン」を作り出します。牛乳は温めることで、吸収にやさしく、より高い効果が期待できます。

牛乳を料理に使う!

カルシウムは、一般食品からスロー吸収でとるのが理想的です。「吸収率が高い=良いもの」とする風潮がありますが、毎日の食事は身体への負担が少ないスロー吸収がベストです。牛乳は料理に使うことで、他の栄養素とつながり、骨量の増加につながるスーパーカルシウム食&スローフードに変わります。

乳製品でとる!

牛乳ではありませんが、チーズやヨーグルトなどの乳製品は、骨量の増加につながることが分かっています。日々の食生活の中に、組み入れることで骨量の低下を抑えることができます。

管理栄養士監修コメント

記事にあるように、乳製品はカルシウムとマグネシウムのバランスが良くないです。

牛乳(普通牛乳)ではカルシウム:マグネシウムが11:1、ヨーグルトでは10:1の割合です。特にチーズはカルシウムとマグネシウムのバランスが良くなく、エメンタールチーズでは37:1、プロセスチーズでは33:1、パルメザンチーズで24:1の割合になります。

そのため、チーズが好きで頻繁に食べる方は、海藻類やナッツ類、雑穀等を意識して食事に取り入れることをお勧めいたします。例えば、チーズトーストを作るときに全粒粉のパンを使ったり、焼きのりを一緒にのせて焼く、ヨーグルトにきな粉やナッツを加えて食べる、などの一工夫でカルシウムとマグネシウムのバランスを整えることができます。

ぜひ美味しく食べながら、しっかりと栄養素をとれるような「バランス食べ」を意識してみてくださいね。

参考:文部科学省 食品成分データベース

骨折と牛乳のまとめ

  • カルシウム量が多く吸収力の高い牛乳は、骨量を低下させる!
  • 骨折のリスクを低下させるには3つのポイントがある!
  • カルシウムをスローフードでとること!
  • ファイバープロテインでカルシウムの定着率を高める
  • 運動などで負荷を与えることで、栄養が骨に集中する

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コメント

「牛乳による骨量低下で骨折率1.6倍!4つの原因とは?」に対する7件のコメント

  1. 1ヶ月前に第五中足骨のところをジョーン骨折してしまい、サッカーができるまで全治3ヶ月程度と言われました。僕は、少しでも早くサッカーがしたいのです。食べ物とかどういうものをどれだけとったらいいのか教えていただけるとありがたいです。

    1. 骨折の回復力をアップさせには、成長モルモンの活性が欠かせません。成長モルモンは体内でコラーゲン産生を高め、新陳代謝を活性化させます。

      成長モルモンの活性化に有効な一般的方法としては、
      1睡眠、2低血糖状態・空腹、3有酸素運動ならびに無酸素運動、4入浴、5食事などがあげられます。

      睡眠中は最も成長モルモンが活性化します。そのためには質の高い睡眠が大切です。不規則な睡眠は睡眠の質を低下させ、疲労物質を発生させます。

      低血糖状態では、脳が低血糖を解消するために、肝臓機能を高めてグルコース産生量を増やします。その時点で通常よりも多い成長モルモンが分泌されます。

      運動では、有酸素運動・無酸素運動ともに、血流量の増加にともない成長モルモンを活性化させます。入浴も同じ効果があるとされています。骨折中であっても、無理なくできる運動をした方がいいでしょう。

      さて食事についてですが、成長ホルモン原料となるタンパク質は重要です。タンパク質を大量にとったからといって、成長モルモンが増えるという研究結果はありませんが、回復には多くのタンパク質を必要とするので、不足には注意したいところです。

      タンパク質の中でも特に注目したいのがⅠ型コラーゲンを中心としたファイバープロテインです。骨タンパク質そのものであり骨の土台としての役割が期待されます。コラーゲンとして摂るなら、通常成人男性では1日5~7gが必要であるため、補う量としては2~3gぐらいとされています。骨折などの損傷がある場合は、その2~3倍は欲しいところです。

      その他、成長ホルモンを促す成分としては、アルギニンやオルニチンが有名です。一部には学術的な研究資料が少ないと反論する研究者もいますが、一般的には期待されている成分です。

      アルギニンを多く含む食品としては「大豆類」「肉類」「魚介類」があります。大豆は全般的にアルギニン含有率が高くなります。肉類では豚ゼラチン、魚介ではエビやマグロといった食品が代表的です。

      ただし、栄養摂取はバランスが大事です。栄養素は単独で機能するのではなく、多くの栄養とともに複合的に機能するので、偏った食事や不規則な食生活の改善は必須です。以上ご参考までに!

  2. sachiko watanabe

    膝骸骨骨折した部位の骨の融合にも有効ですか?

    1. 骨の種類によって骨の構造は多少違いがあります。しかし基本的には、骨タンパク質が土台になってカルシウムが定着する構造には変わりはありません。期待されて問題ありません。

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