カーボローディング効果!超持久力を生み出すメカニズム

マラソン持久力

カーボローディングは、マラソンランナーにとって持久力を高めるための有効な調整方法です。

マラソンなどの長距離走のほかにも、トライアスロンや自転車ロードレース、トレイルランニングやクロスカントリーなどの持久力系スポーツで効果を発揮します。

そのカーボローディング効果を最大化するメカニズム?

カーボローディングとは

「カーボローディング」とは、運動量と食事を調整することで、試合当日に通常の2~3倍のグリコーゲンを蓄える方法で、スポーツ医学的に効果が検証されています。持久系スポーツの必須調整法です。

パン-炭水化物

「グリコーゲン」とは、エネルギーの原料である糖質(ブドウ糖)を、一時的に蓄えておく状態(物質)のことで、この貯蔵量によって身体能力は大きな影響を受けます。

カーボローディングは「グリコーゲンローディング」ともいわれます。ちなみにカーボローディングのカーボとは炭水化物(カーボハイドレイド)のことです。

カーボローディングの効果

通常のエネルギー貯蔵量

通常の成人男性が貯蔵できるグリコーゲンの量は、肝臓に100g、筋肉(骨格筋)に250~350g、合計350~450gほどになります。普段から炭水化物を充分にとりながらトレーニングをしている場合は、500g以上のグリコーゲンを筋肉に蓄えられるといいます。

そのグリコーゲンで得られる効果は「グリコーゲン1g=カロリー4kcal」なので、通常のエネルギー量は1400~1800kcalになります。マラソン時の消費カロリーは体重1kgあたり「1km=1kcal」ですから、体重60kgの方で「1km=60kcal」、つまり計算上、糖質だけで23~30kmほど走れることになります。

カーボローディングで得られる貯蔵量

カーボローディングでカーボアップすることで、肝臓が通常の2倍、筋肉が通常の3倍のグリコーゲンを貯蔵する効果が期待されます。カロリーに変換すると2800~5400kcalで、フルマラソンの消費カロリー2500kcalを大きく上回ります。

エネルギー代謝メカニズム

しかし全てのグリコーゲンが使われるわけではありません。貯蔵量の40%ほど消費したところで、一気に糖質のエネルギー代謝が低下します。マラソンの30kmあたりから急激に失速するのはそのためです。

それは生命維持活動のために、心臓筋や脳が消費するエネルギーを維持する必要があるからです。また脂肪のエネルギー代謝にも糖質が使われます。その割合は「脂肪1:糖質1」といわれています。

レース当日に照準を合わせる

調整がズレると逆効果になることがあります。

カーボローディングは、レース当日にタイミングを合わせる必要があります。それだけ持久力が高まるなら、普段からグリコーゲンの貯蔵を増やそうと考えそうなものです。しかし糖質は、1~2日で脂質に変化してしまします。つまりレース日にあわせて、その7日前から調整することが必要なのです。

効果のある糖質 効果のない糖質

持久力の効果を高めるカーボローディングですが、糖質の中でも全く効果のない糖質があります。

糖質にはグルコースとフルコースという2つの種類があります。このうちフルコースは代謝されて肝臓で貯蔵されますが、筋肉中に貯蔵することはできません。貯蔵量は肝臓よりも筋肉の方が3倍以上多いので、それではカーボローディングの効果を、充分に得られることはできません。そのためカーボローディングでは、炭水化物を中心にしたグルコースを摂取することになります。

× フルコースを含む食品:お菓子や果物などの糖類

○ グルコースを含む食品:ごはん、パンなどの炭水化物、ジャガイモ等でんぷん

カーボローディングのメカニズム

体の本能的なメカニズムであるリバウンド機能を利用して、一気にグリコーゲンを蓄える方法がカーボローディングです。以前は古典式といわれる方法が主流でしたが、効果が安定せず課題が多くあったため、現在では新しい方法が取り入れられています。

古典式カーボローディング

古典式なカーボローディングは、1週間前から糖質制限をしながら、運動量を増やして体内のグリコーゲンを使い切ります。その後、高糖質食に切り替えて、リバウンドを利用して糖質を蓄えるものです。

通常よりも多くのグリコーゲンが貯蔵できるため、エネルギー源の維持には有効とされていました。しかし過度な運動量と低血糖状態で、疲労回復が長引いたり体調を崩したりすることもあり、充分な効果を得ることができなかったのです。

新式のカーボローディング

そこで昨今推奨されているカーボローディングでは、レースの4日前までは普通の食事をして、3日前から休養をとりながら高糖質食に切り替える方法を行います。それにより通常の2~3倍のグリコーゲンが貯蔵され、安定的な持久力効果を得られるようになります。

カーボローディングの実践方法

カーボローディングは試合の1週間前から、練習量調整と高炭水化物の摂取法を活用して行います。

  運動量 食事(%はカロリー割合) 糖質量
7日前 糖質使い果たす運動 通常/炭水化物50~60% 普通
6日前 運動量を少なくする 通常/炭水化物50~60% 普通
5日前 運動量を少なくする 通常/炭水化物50~60% 普通
4日前 運動量を少なくする 通常/炭水化物50~60% 普通
3日前 運動量を少なくする 高糖質食/炭水化物70%以上 高糖質
2日前 少ないか、しない! 高糖質食/炭水化物70%以上 高糖質
1日前 少ないか、しない! 高糖質食/炭水化物70%以上 高糖質
試合当日 軽いストレッチ 試合直前/消化のいい炭水化物 超高糖質

運動量の調整方法

運動の調整方法とは、休憩のやり方でもあります。

1週間前から練習量を減らしていきます。半分から3分の1程度まで落とし、試合3日前ぐらいには、軽い調整か完全休憩をします。グリコーゲンが完全に枯渇すると、回復までに3日ほどかかります。ポイントは完全に疲れがとれていて、筋肉が最高レベルにある状態を、試合当日に合わせることです。

食事量の調整方法

試合4日前までは通常食、3日前から炭水化物を中心とした高糖質食の献立に変更します。高糖質食とは、通常の食事での糖質割合が50~60%なのに対して、高糖質食では70%以上になります。

◆【1日の炭水化物摂取量】=【1日の総カロリー量】×【炭水化物摂取割合(%)】÷【 4 】

例えば、1日の総カロリー量を2500kcalで炭水化物割合を50%とした場合、炭水化物量は【312.5g】になります。それが70%になると【437.5g】になり、炭水化物の増加量は【125g】になります。

糖質エネルギーが増えた分だけ、脂質をコントロールする必要があります。体重が増えすぎて、カーボローディングの効果が低下してしまいます。目安は増えた糖質量の半分量の脂質です。

ただし、高カロリーな食事をすれば良いということでもありません。糖質や脂質を代謝するためには必須となる栄養成分があります。それは「カーボローディングで失敗する人!」でご紹介しています。

トライアスロンなどの大会の前日・前夜には「カーボ・パーティ」が行われます。その時振る舞われる食べ物が、パスタやうどん、焼きそばなどの炭水化物です。カーボローディングの最後の仕上げですね!成績を出すには効果的な方法です。

主な食品の糖質量

食品名 一食あたりの量 糖質量
精米ごはん 150g(茶碗1杯) 55.2g
玄米こはん 150g(茶碗1杯) 51.3g
おかゆ(精白米) 220g(茶碗1杯) 17.2g
食パン 60g(6枚切り1枚) 26.8g
うどん(茹で:麺のみ) 250g(1玉) 52.0g
そうめん(麺のみ) 50g(1束) 35.1g
中華麺(生:麺のみ) 130g(1玉) 69.7g
そば(茹で:麺のみ) 170g(1玉) 40.8g
スパゲティ(乾麺) 80g(1人前) 55.6g
さつまいも 180g(中1個) 52.5g
じゃがいも 120g(中1個) 19.6g
牛肉(バラ肉) 100g 0.1g
豚肉(もも、ロース、ヒレ) 100g 0.1g
鶏肉(もも、ムネ、ささみ) 100g 0.1g
まぐろ(赤身) 60g(刺身5切れ) 0.1g
たまご(鶏卵) 50g(1個) 0.2g

 カーボローディングの弊害

カーボローディングを失敗してしまうこともあります。レース3日前から、炭水化物をたくさん食べれば良いわけではありません。大きな落とし穴が3つあります。

高炭水化物の食事になるため、一時的に体重が増えます。その体重増加量は、摂取した糖質の4倍にもなります。体重増加以上の効果を出さなくては、ハンディになるだけですよね!また糖質は時間が経つと脂肪に変わります。そうなっては元も子もありません。

またトップアスリートが実践している「反作用的低血糖」を活用した、血中のインスリン濃度を調整する方法もありますが、低血糖からくるインスリン反応でパフォーマンスが下がるため、専門のトレーナーの指導がない状態ではオススメしません。

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カーボローディング まとめ

  • 持久力系スポーツにおいて効果的なグリコーゲン貯蔵法
  • 最大2~3倍の糖質(グリコーゲン)を貯蔵できる効果
  • 炭水化物のほかにも重要な栄養成分がある
  • 休憩も効果をだすには大切なファクターになる
  • レース当日に照準を合わせて1週間前より調整する

参考になる計算式

  • グリコーゲンのエネルギー量:グリコーゲン1g=4kcal(糖質100g=400kcal)
  • 脂質のエネルギー量:1g=9kcal(7kcal)
  • マラソン時の消費エネルギー量:1km=1kcal(体重1kgあたり)
  • 通常の糖質貯蔵量は、肝臓100g程度、筋肉250~350g程度
  • 通常のスポーツ選手の糖質消費量:体重1kg=糖質7g
  • 実業団レベルの選手の糖質消費量:体重1kg=糖質15g(約60kcal/kg)
  • グリコーゲン増加分の3倍の体重増加:グリコーゲン100g

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