水分補給は「熱中症対策の基本」ですよね!ではどのようなドリンクが効果的なのでしょうか?反対に脱水症状を悪化させ、「低ナトリウム血症」や「水中毒」を起こす飲料もあります。
比較表で成分の違いをご覧いただき、シーン別の熱中症対策やパフォーマンスの維持にお役立てください。
目次
熱中症予防ドリンクの比較
比較のためにインターネットで検索が多い、または熱中症対策をPRしているドリンクならびにパウダーを7種類抜粋しました。分かりやすいように商品名を掲載していますがご了承ください。
- OS1:経口補水液OS-1(PETボトルタイプ)/大塚製薬
- WAI:経口補水パウダーW-AID(1包6g/200~500ml)/五洲薬品
- AMI:アミノバイタル電解質チャージ/味の素
- POC:スポーツドリンク ポカリスエット(PETボトル500ml)/大塚製薬
- AQU:スポーツドリンク アクエリアス(PETボトル500ml)/コカ・コーラ
- BOD:ボディメンテ(PETボトル500ml)/大塚製薬
- GAZ:ガゼル/Gazelle(1包11g/500ml)/ステアス
ドリンクの成分比較表
栄養成分一覧表
500mlまたは1包あたりの栄養成分表示
栄養成分表示 | OS1 | WAI | AMI | POC | AQU | BOD | GAZ |
エネルギー(kcal) | 50 | 19.2 | 19 | 125 | 95 | 90 | 33 |
ナトリウム(mg) | 575 | 346 | 394 | 236 | 197 | 256 | 617 |
食塩相当量(mg) | 1,460 | 880 | 1,000 | 600 | 500 | 650 | 1,562 |
タンパク質(g) | 0 | 0 | 2.3 | 0 | 0 | 0 | 0 |
脂質(g) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物(g) | 12.5 | 4.8 | 5 | 31 | 23.5 | 22 | 8.5 |
糖質 (g) | 12.5 | 4.8 | 5 | 33.5 | 25.0 | 22 | 8.5 |
汗の塩分量3g以上/L
米国立衛生研究所では、汗1L中の塩分量を約3g(3000mg)としています。(上の表は0.5Lあたりの成分量)しかしスポーツにおいては、運動強度や環境によって大きく異なり3~9gと想定されます。運動強度が高く急激に汗をかくほど、塩分濃度が高くなります。
スポーツ飲料は1Lの塩分量が約1g(0.1%)程で、日本体育協会が推奨する塩分0.1~0.2%(1~2g/L)、糖分4~8%(40~80g/L)の範囲内ですが、脱水症状時や1時間以上の運動には適していないことが分かります。
経口補水液の塩分濃度が高いのは?
ナトリウム量 | 糖質量 | 味覚 | |
経口補水液(低浸透圧) | 多 | 適度 | 塩味を感じる |
スポーツ飲料(中浸透圧) | 少 | 多 | 甘味が強い |
経口補水液とスポーツドリンクの比較では、経口補水液の塩分濃度が高く、糖質(炭水化物)の割合が少なくなっています。それは汗で失った塩分量を補給することで、電解質の減少を抑え、体内での保水力を確保するためです。また糖質は小腸での水分吸収を高めてくれますが、高浸透圧になる特徴があります。
ミネラル成分一覧(500mlあたり)
汗には塩分のほかにも、多くのミネラルが含まれています。それらの成分にも重要な役割があり、その流出は運動機能の低下につながります。
ミネラル成分 | 汗の成分(mg) | OS1 | WAI | AMI | POC | AQU | BOD | GAZ |
ナトリウム | 450~1770 | 575 | 173 | 394 | 236 | 197 | 315 | 617 |
塩分相当量(g) | 1.1~4.5 | 1.46 | 0.88 | 1.0 | 0.6 | 0.5 | 0.65 | 1.56 |
カリウム | 40~168 | 390 | 157 | 401 | 100 | 40 | 100 | 92 |
カルシウム | 7.5~25 | – | 9.6 | 49 | 10 | – | 10 | 19 |
マグネシウム | 1.1~1.7 | 12 | 4.8 | 18 | 3 | 6 | 3 | 4.7 |
亜鉛 | 0.7~0.95 | – | – | – | – | – | – | 1 |
クロム | 0.1 | – | – | – | – | – | – | 0.03 |
銅 | 0.4 | – | – | – | – | – | – | 0.2 |
マンガン | <0.1 | – | – | – | – | – | – | 0.4 |
ヨウ素 | <0.1 | – | – | – | – | – | – | 0.08 |
セレン | <0.1 | – | – | – | – | – | – | 0.05 |
モリブデン | <0.1 | – | – | – | – | – | – | 0.03 |
その他微量元素 | <0.1 | – | – | – | – | – | – | 〇 |
汗に含まれる電解質(ミネラルまたはイオン)を掲載しています。汗の成分量は米国立衛生研究所や複数の報告書をもとに示しています。ただし運動強度や競技、環境によって成分濃度が大きく変わります。
細胞をコントロールするミネラル
電解質は水に溶けると電気を通す物質のことで、細胞浸透圧の調整、神経細胞・筋肉細胞の活動に関わる重要な成分です。また多くの代謝に関与し、微量な元素であっても生命維持に重要な役割を果たしています。
電解質の濃度がポイント!
電解質が減少すると保水率が低下!
電解質が減少すると、体内の保水率が低下します。それは体内の電解質濃度の低下を防ぐために、あえて脱水症状を引き起こすことで起こります。ある程度は、体内に備蓄されているミネラルが補います。
しかし長時間の発汗や大量の汗により多くの電解質を失うと、補える範囲を超え保水率が低下します。体内の水分量が減少すると、体温が上昇をはじめ、身体機能の低下、吐き気、めまいなどの熱中症が現れます。
その時に水だけを飲み続けると、脱水症状による発汗でさらに多くの電解質を失い、低ナトリウム血症や水中毒の原因になるので注意が必要です。
汗1Lで失う電解質=40~160mEq/L
主要ミネラルの電解質濃度(mEq/L)
minaral:mEq/L | OS1 | WAI | AMI | POC | AQU | BOD | GAZ |
ナトリウムイオン(+) | 50 | 30 | 34 | 21 | 17 | 21 | 54 |
カリウムイオン(+) | 20 | 8 | 20 | 5 | 2 | 5 | 5 |
カルシウムイオン(2+) | – | 1 | 8 | 1 | – | 1 | 2 |
マグネシウムイオン(+) | – | 0.9 | 5 | 0.5 | 1 | 0.5 | 0.8 |
塩素イオン(-) | 50 | 30 | 34 | 16.5 | 17 | 16.5 | 53 |
電解質合計(mEq/L) | 120 | 69.9 | 101 | 44 | 37 | 44 | 115 |
*電解質の算出は公表されている成分表から行っており、メーカーが電解質量を公表している場合はそちらを優先しています。
細胞への指令回路「電解質」とは?
電解質物質は水に溶けると、原子を囲む電子数によって、電気を帯びた(+)イオンか(-)イオンに分かれます。食塩(塩化ナトリウム)を例にすると、塩素(-)とナトリウム(+)に分かれます。
イオンは触媒として全身に情報伝達を行い、筋肉細胞などすべての細胞をコントロールしています。そのため電解質の減少は、身体機能を低下させ、筋収縮の鈍化、判断力や気力の低下を引き起こします。
主な電解質には、ナトリウム、塩素(クロール)、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルがあります。その中でもナトリウム、塩素、カリウムが電解質全体の95%を占めます。
価格の一覧表
500mlあたり、もしくは1包(500ml相当用)の希望価格ならびに安値価格をしましました。(令和元年5月31日現在でのインターネット調査)
(消費税込:円) | OS1 | WAI | AMI | POC | AQU | BOD | GAZ |
一般価格 | 205 | 103 | 173 | 169 | 112 | 204 | 81 |
安値価格 | 165 | 59 | 100 | 118 | 84 | 158 | 73 |
水分の補給量は?
- 運動前・・・250~500ml
- 運動中・・・500~1000ml/1時間
これは一般的な補水量ですが、運動強度や温度湿度により必要量が異なります。また運動中は一気に飲むのではなく、10~15分毎にこまめに補水するように心がけましょう。
ドリンクの3つの種類と特徴
ドリンクの種類
- 低浸透圧(ハイポトニック飲料)経口補水液
- 中浸透圧(アイソトニック飲料)スポーツドリンク
- 高浸透圧(ハイパートニック飲料)清涼飲料水など
水分補給用のドリンクは、細胞への浸透圧別に3つに分けられます。細胞内よりも圧力が低い低浸透圧のパイポトニック飲料、高浸透圧のハイパートニック飲料、細胞圧と同等のアイソトニック飲料です。
低浸透圧で代表的なのが「経口補水液」で、脱水症状時にすばやく水分吸収ができるように設計されています。他方スポーツドリンクは中浸透圧で、水分補給と電解質の補給を目的にしていますが、経口補水液よりも塩分が少なめで糖質が多いという特徴があります。
幼児の脱水症状時にスポーツドリンクを飲ませると、低ナトリウム血症から水中毒になるとの報告がされています。
浸透圧による特徴
浸透圧は溶液中に溶けている物質(塩分や砂糖など)が多いほど高くなります。水分は低浸透圧から高浸透圧に移動し、物質は高浸透圧から低浸透圧に移動する特性があります。
- 水分:低浸透圧 ⇒ 高浸透圧
- 物質:高浸透圧 ⇒ 低浸透圧
その特性を利用したのが漬物です。キュウリを塩や塩水につけ込んだ場合、キュウリの中よりも外側の圧力が高くなります。そのためキュウリ内の水分は外に流出し、塩分がキュウリの中に入ってきます。
塩っぽいものや甘いものを食べると、喉が渇きますのね!体液の浸透圧が高くなると、細胞内の水分が吸い取られてしまいます。それを防ぐ対策として、体液を薄めるためのメカニズムです。
つまり脱水症状を予防するには、細胞内に水分量を維持することが大切で、そのため細胞外液を低浸透圧にする「経口補水液」が効果的なのです。さらに総合的なミネラルを補給することも重要です。
*細胞膜は水分は通しますが、物質はほとんど通しません。そのため細胞外液が高浸透圧になったからといって、水分量は減りますが細胞が塩漬けや砂糖漬けになることはありません。
脱水症状を悪化させるドリンク
人の細胞がキュウリだとしたら、細胞外液が高浸透圧の場合、細胞の水分が吸い取られてしまいます。つまり脱水症状を悪化させるドリンクとは「高浸透圧飲料」です。
代表的な高浸透圧飲料は「コカ・コーラ」などのほぼ糖質のみの清涼飲料水です。浸透圧値としては846mosm/Lで、中浸透圧であるスポーツドリンク250~350mosm/Lの約3倍、低浸透圧である経口補水液100mosm/L前後の8倍以上の圧力差があります。スポーツ中や熱中症対策には、低浸透圧飲料が効果的です。
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