マグネシウム不足でカルシウムが悪玉化!筋収縮・反射神経・回復が低下【管理栄養士監修】

悪玉化

 

マグネシウム不足は、筋肉の痙攣、反射神経の鈍化、心拍機能の乱れ、骨密度の低下、血圧や血糖値の乱降下、精神的な不安定、ストレス増大、自律神経の乱れ、判断力や集中力の低下、疲労感の原因になります。

特にアスリートはマグネシウム消費が激しく、カルシウムが悪玉化するカルシウム・パラドックスを起こしやすいのです。その他のミネラルのバランスも崩れ、スムーズは筋肉収縮や情報伝達を阻害します。

コンディションの低迷、体調不良、イライラや超緊張、怪我の治りの悪さで悩まれている方は、マグネシウム不足を疑ってはいかがでしょうか?日本人は平均3割ほどのマグネシウム不足といわれています。

マグネシウムの働き

マグネシウムの働き

マグネシウムはカルシウムなど、すべてのミネラルの濃度や機能をコントロールしています。エネルギー代謝、酵素反応、筋肉収縮、体温調整、ホルモン分泌、神経伝達、精神的安定などに深く関わっています。

マグネシウム・バランス

  • ミネラルのバランスをとる
  • カルシウムの濃度や機能をサポート
  • 筋肉の動きをスムーズにする
  • ストレス緩和や精神的な安定
  • 判断力・集中力・記憶力などの脳機能の関与
  • エネルギー代謝は酵素反応を始動させる
  • ホルモンの分泌をコントロールする

ミネラルのバランスを調整するコントローラー

ミネラルは人間にとって、最も重要な栄養素です。人体60兆個すべての細胞を動かす基礎的栄養素で、あらゆる健康、体調不良や疾患に影響を与えているとされます。仮にミネラルが不足しているといって個別のミネラルをとっても、マグネシウムが不足していれば、血中のミネラルバランスは改善しません。

その他のミネラルについては「ミネラル・ビタミンの完全ガイド!」

カルシウムの濃度調整や働きをサポート

カルシウムは骨をつくる栄養素として知られていますが、マグネシウムが不足していると骨は形成されません。骨はコラーゲンなどの土台に、カルシウムが固定され骨が構成されます。そのカルシウムを結晶化する「アルカリフォスファーゼ酵素」や骨ビタミンであるビタミンDはマグネシウムにより活性化します。

筋肉の動きをスムーズにする

筋肉収縮はカルシウムが筋細胞に侵入することで開始します。その細胞内カルシウムを、細胞外に連れ戻すのがマグネシウムです。マグネシウム不足で細胞内カルシウムが排出されず蓄積し続けると、筋肉の痙攣や動作の鈍化、さらに神経細胞や免疫細胞の誤作動の原因になります。

ストレスの緩和と精神的安定

スポーツや社会では、多くのストレスと共存しています。そのストレスの悪影響を最小限にとどめ、コントロールできるメンタル性が求められています。マグネシウムにはストレスを緩和し、ホルモンの分泌を正常化させる役割があります。また精神的に関係するビタミンB群などの活性化にも貢献しています。

判断力・集中力・記憶力などの脳機能

認知、記憶、推測、思考、判断、集中などの機能に関係します。脳細胞のスイッチもカルシウムが担っていますが、そのスムーズなON/OFFをマグネシウムがコントロールしています。また脳の指令を全身に反応させる神経や筋肉への伝達スピードにも影響します。

エネルギー代謝や酵素反応・その他

マグネシウムは、エネルギー代謝、300を超える酵素反応にも大きな影響を与えています。またホルモンの分泌にも関わり、生命維持において最も優先度が高い栄養素です。

エネルギーについての詳しい解説は「エネルギー代謝の仕組み」

マグネシウム不足で起こる症状

マグネシウムは酵素反応、スムーズな細胞活動、ホルモン分泌、血圧などの自律神経の調整、ミネラルバランスの調整などの役割があることから、不足によりあらゆる症状を誘発します。

神経伝達障害

  • 筋肉収縮の異常や遅れ
  • 神経伝達の誤作動や遅れ
  • 集中力や記憶力などの脳機能低下
  • 血管や内臓の石灰化による硬化
  • 腱や靭帯の硬化
  • 免疫細胞の誤作動によるアレルギー症状
  • 疲労回復の遅れや日々の疲労感
  • 頭痛などの生理的な疾患
  • 不眠症や睡眠障害
  • イライラやストレスの増大
  • 心筋梗塞や脳梗塞などの生活習慣病
  • Ⅱ型糖尿病の発症と悪化
マグネシウム不足により細胞内のカルシウム過多による症状
骨格系 骨折、骨粗鬆症、腰痛
筋肉系 便秘、運動失調、筋肉の痙攣、肉離れ、視力低下
神経系 めまい、てんかん、多動症、自閉症、うつ、不眠症、学習能力減退、月経前症候群
免疫系 風邪、アレルギー、癌、リウマチ、などの自己免疫疾患
循環器系 突然死、心筋梗塞、脳卒中、高血圧
内分泌系 糖尿病、低血糖症、前立腺肥大、子宮内膜症、生理痛、生理不順
出典:「老けない体」は骨で決まる 山田豊文 青春新書

厚生労働省は、マグネシウム不足による疾患リスクとして、高血圧、心血管疾患、2型糖尿病、骨粗しょう症、(片頭痛)をあげています。厚生労働省:「統合医療」情報発信サイト/マグネシウム

運動機能への影響

マグネシウム不足は、短期的には筋収縮、判断力や集中力を低下させます。長期的には軟骨の石灰化による関節炎、血管硬化による血圧上昇と心臓負担増での持久力の低下、内臓機能の低下、神経痛、ケガになりやすく治らないなどの悪影響があります。

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さまざまな病気の原因になる

マグネシウムが不足すると、カルシウムのコントロールが効かなくなり、カルシウムの血管収縮作用によって血管を細くします。また「異所性石灰化」により、血管や内臓にカルシウムが付着し硬化させることで、高血圧、心筋梗塞、心疾患、脳梗塞を誘発します。(Mg摂取で心筋梗塞の発症が3~4割低下報告あり)

また多くの生活習慣病やⅡ型糖尿病の成因のひとつに、「インスリン抵抗性」(インスリンの効きが悪い状態)があり、慢性的なマグネシウム摂取不足が関わっていることが明らかにされています。さらにマグネシウムを摂取することで、炎症の度合いを示す「炎症性マーカ濃度」が低くなることも報告されています。

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悪玉カルシウムによる運動機能への影響

マグネシウム不足によるカルシウムへの影響で、もっとも注意するのが「カルシウムの悪玉化」です。細胞や神経の誤作動や血管や内臓にカルシウムが溜まる「異所性石灰化」を発生させます。

カルシウムの運動的役割

体内のカルシウムの99%は骨と歯に貯蔵され、それらの強度を保っています。残りのわずか1%が血中や細胞に含まれ、運動機能、神経伝達、生命活動に重要な働きをしています。

筋肉を始動するスイッチ

血中カルシウムの役割として「細胞のスイッチ機能」があります。細胞の合成や活動は、細胞の外側のカルシウムが内側に入り込むことで電気刺激が起こり、細胞スイッチがONになります。活動が開始されると、カルシウムが素早く細胞外に戻り、スイッチがOFFになります。これはほぼすべての細胞で行われています。

生命活動のスイッチ

生命活動そのものである酵素反応も、このスイッチにより開始されます。酵素は呼吸、消化、細胞合成、思考、記憶、有害物質からの防衛など、体内での化学反応(代謝)の主人公です。また筋肉を動かす筋収縮、情報伝達、ホルモン分泌、記憶や集中なども、この細胞スイッチの役割です。

カルシウムの悪玉化2つの影響

カルシウムが体内にあふれる「カルシウム・パラドックス」によって悪玉化します。それにより「細胞スイッチの故障」と「異所性石灰化」が発生します。

頻発する細胞スイッチの故障

カルシウムが細胞の外側になかなか戻れず、スイッチがONになった状態が続くと、細胞内カルシウム濃度が過剰になり様々な症状を引き起こします。筋肉の痙攣、筋収縮の遅れ、判断の鈍さ、集中力の欠如、疲労回復の遅れなどの原因になります。またアスリートにも多いアレルギーに大きく関わります。

アレルギー症状である炎症は、ヒスタミンという物質により発生します。この「炎症モード」のスイッチがONのままだと、免疫細胞がパニックを起こし「炎症」という非常事態アラームを鳴らし続けます。

血管や内臓の石灰化

本来カルシウム99%は、骨と歯で石灰化しますが、悪玉カルシウムの発生で、細胞内のカルシウム過剰蓄積、血管・神経・内臓・軟骨などが石灰化する「異所性石灰化」を起こします。

その影響は、運動機能の低下や障害、脳機能の低下や障害、精神的な不安定や障害に留まらず、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧や高血糖、生活習慣病の原因になります。

悪玉カルシウム2つの原因

カルシウムの悪玉化では、骨を分解する「脱灰」が異常にすすみ、骨を再形成する「再石灰化」が追いつかなくなる症状が起きます。その原因は「マグネシウム不足」と「高タンパク質食」です。

高タンパク質食への注意!

筋トレやダイエットで行われる高タンパク質食は、悪玉カルシウムを発生させます。動物性タンパク質の代謝で、体液は酸性化します。その中和のために、骨を分解してカルシウム血中濃度を高めます。

大量に溶けだしたカルシウムは、本来とは違う場所に定着する「異所性石灰化」を促進させます。高タンパク質食や低炭水化物食を実践する方は、体液のpH値やマグネシウム不足に注意しましょう。

牛乳による異常な石灰化!

カルシウム悪玉化の原因のひとつとして「牛乳」があげられます。牛乳は微量しかマグネシウムを含まないため、異所性石灰化を起こしやすく、欧米では骨密度を低下させる食品としても知られています。

また日本人は牛乳を分解するラクターゼという酵素の働きが悪く、牛乳が未消化のまま腸に達します。免疫システムはそれを異物と捉え、アトピー性皮膚炎などのアレルギーの原因になると指摘されています。

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マグネシウムの摂取効果と方法

慢性的にマグネシウム不足をしている現代人やアスリートが、マグネシウムをとる効果は非常に高いといえます。即効性もあるため、摂取することですぐに効果が実感できると思います。

マグネシウムはどれだけ摂ればいいの?

1日のマグネシウム摂取量

マグネシウムの1日の推奨量は、厚生労働省が定めています。推奨量は日本国民の平均なので、ストレス、飲酒、喫煙、運動により、マグネシウムが大量に消費される方は、多くとることが必要があります。スポーツ選手については運動量と発汗量によりますが、推奨量の数倍が必要とされます。

マグネシウムの摂取推奨量   単位:mg/日
性別
0~5(月)
6~11(月)
1~2(歳) 70 70
3~5(歳) 100 100
6~7(歳) 130 130
8~9(歳) 170 160
10~11(歳) 210 210
12~14(歳) 290 280
15~17(歳) 350 300
18~29(歳) 340 270
30~49(歳) 370 290
50~69(歳) 350 290
70以上(歳) 320 260
妊婦 +40
授乳婦
厚生労働省(日本人の食事摂取基準2010年度より) 

マグネシウムを多く含む食品

マグネシウムは大豆食品、魚介類、ナッツ類に多く含まれます。

マグネシウムが多い食品  単位:mg/食品100g
乾燥物(水分40%未満) 非乾燥物(水分40%以上)
あおさ 3,200 なまこ 160 納豆 100
あおのり 1,300 しらす半乾燥 130 がんもどき 98
わかめ 1,100 豆味噌 130 昆布の佃煮 98
ひじき 620 油あげ 130 いくら 95
昆布 540 ゆで大豆 110 はまぐりの佃煮 95
干しエビ 520 粒入りマスタード 110 のりの佃煮 94
とろろ昆布 520 いわしの丸干し 100 桜エビ 92
ピュアココア 440 あさり 100 つぶ貝 92

食品のマグネシウム含有量を詳しく知りたい方はこちら

マグネシウム摂取で注意すること!

マグネシウムの補給については、単体でとることをオススメしていません。ミネラル群は互いに依存しており、単体での過剰摂取は問題もあります。バランスよくとることで、過剰に摂取した分は排出されます。

また牛乳やカルシウムのサプリメントは注意が必要です。吸収がいい、または過剰摂取することで、カルシウムは尿で排出されます。それと同時にマグネシウムも排出されます。

低ナトリウム血症の危険性!

ここでは「マグネシウムの重要性」と「カルシウムの悪玉化」について説明してきましたが、運動によって多くのミネラルも消費します。また発汗によりマグネシウムやカルシウムの他に、ナトリウム、カリウム、鉄、亜鉛、その他微量元素も流出します。

特にマラソンやトライアスロンなどの発汗量の多いスポーツ選手は「運動誘発性低ナトリウム血症」の危険性があります。大量に水分をとることでナトリウム濃度が低下し、体の電解質が低下して、めまい、むくみ、頭痛、激しい疲労感、錯乱などを発症し、重度化で死亡例も数多く報告されています。

スポーツ選手の水分補給は、水ではなくスポーツドリンクやミネラル入りの水を摂取してください。ミネラルバランスとしては「海の塩」が人間のミネラル構成と近いのでおススメです。1リットルあたり2~3g(0,2~0.2%)の海水塩が最適です。できればその上に、マグネシウムを多めにとることで、コンディションが調整しやすくなります。

アスリートが食事でマグネシウムをとる方法

【管理栄養士 山本亜由美 監修】

マグネシウムをとれるレシピ

1.納豆の包み焼き

大豆食品は、マグネシウムをとるための鉄板食品です。できれば毎食時、少なくても1日1回は大豆食品を食べることをおすすめします。

  • 納豆1パック(Mg:40㎎)
  • 油揚げ1枚(Mg:60㎎)
  • しらす干し10g(Mg:13㎎)
  • 大葉10枚(5g):(Mg:3.5㎎)

みじん切りにした大葉、シラス干し、納豆1パックをよく混ぜ、半分に切った油揚げに入れ爪楊枝で閉じてフライパンで煎るだけ

2.玄米おむすび

玄米むすびは、理想的なマグネシウム補給食です。しかもその他のミネラルや代謝や神経伝達に重要なビタミンB群も多く含みます。またゴマにも多くのマグネシウムが含まれています。

  • 玄米200g(Mg:98㎎)
  • シラス干し10g(Mg:13㎎)
  • 干しエビ3g(Mg:15㎎)
  • 豆味噌5g(Mg:6.5㎎)

上記材料をボウルに入れ、よく混ぜて2等分にしおにぎりにする。(焼きのり(1/4枚×2:Mg4.5㎎)で包んでもおいしく食べられます。)

3.海藻の味噌汁

海藻はミネラルの宝庫です。特にマグネシウムの含有量が多いため、できれば毎食、少なくても1日1回は摂りたい食品です。あおさの他にも、乾燥わかめ(5g/Mg55mg)、昆布(5g/Mg36mg)もバリエーションがあっていいですね。

  • あおさ5g(Mg160㎎)
  • かつおだし130㎎(Mg4㎎)
  • 豆みそ おおさじ1(15g/Mg19㎎)

1日1回はこれを食べよう!

玄米、雑穀、全粒粉に変える

玄米や雑穀、全粒粉は精製していないため、多くのミネラルを含んでいます。穀物は表面近くに多くのミネラルやビタミンB群などがあり、精製することでそれらを失ってしまいます。しかしその部分は農薬の残留が多いところでもあるので、無農薬や有機栽培のものをおすすめします。

白米100g(Mg:7㎎)→玄米100g(49㎎)、発芽玄米100g(Mg:53㎎)、はいが精米100g(Mg:24㎎)、 食パン1枚60g(Mg:19㎎)→ライ麦パン1枚60g(40㎎)

飲み物をミネラルウォーターに

「硬水」と呼ばれるミネラルウォーターの中にも、マグネシウムを豊富に含むものがあります。ちなみに硬水とは、ミネラルを多く含むために、口当たりに硬さを感じる水のことです。

  • HYDROXYDASE(ハイドロキシダーゼ:1本200ml)…48㎎
  • GEROLSTEINER(ゲロルシュタイナー:1本500ml)…50㎎
  • SANPellegrino(サンペレグリノ:1本500ml)…52.5㎎
  • evian(エビアン:1本500ml)…26㎎
  • Contrex(コントレックス:1本500ml)…74㎎

参考サイト:ミネラルウォーター&炭酸水を比較しよう!

1日1回は海藻を食べる

魚介類は他の食品と比べて、マグネシウムの含有率が高いという特徴があります。特に海藻の「あおさ」は10gで320㎎のマグネシウムを含んでおり、1日のマグネシウムがこれだけで補えてしまいます。

調理に使用する塩は海水塩

調理塩は海水塩をおすすめします。通常の食塩は生成され塩化ナトリウムを主体としているため、摂り過ぎることで高血圧症などの要因になります。一方海水のミネラル割合は、人間の体液と似ており、摂り過ぎによる許容値が高いようです。

しかし製法によって、マグネシウムなどの含有量は低下します。蒸発製塩法による海水塩のマグネシウム含有率が高く、沖縄の「ぬちまーす」や「雪塩」などのマグネシウムの含有率がもっとも高くなっています。

小腹が空いたらナッツ類

アーモンド、松の実、カシューナッツ、落花生、くるみなども多くのマグネシウムを含んでいるため、間食するときに食べたい食品です。ちなみに善玉脂質も多く含みます。

オリジナルドリンクを考えてみよう!

ミネラルウォーターを活用して作ります。

オリジナルスポーツドリンク
  •  コントレックス 500ml(Mg:74㎎)
  •  黒砂糖大さじ3(27g)(Mg:8㎎)
  •  ぬちまーす0.7g(Mg:25㎎)※瀬戸のほんじお(海水塩)0.7g(Mg:2㎎)
  •  レモン果汁25ml(Mg:2㎎)
アーモンドミルクを活用(スムージー)
  •  アーモンドミルク(市販:濃いアーモンドミルク125ml/Mg:32㎎)
  •  アボカド1/2個50g(Mg:16㎎)
  •  レモン果汁25ml(Mg:2㎎)
  •  ほうれん草50g(Mg:34㎎)

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