身体機能のすべてをコントロールする「ビタミン」と「ミネラル」
ビタミンとミネラルは、筋肉・神経・脳・代謝など、身体のすべての機能の基礎栄養素です。これらが不足すると、身体のあらゆる器官の活動が低下します。もしもビタミンやミネラルが枯渇すると、細胞は活動を停止し、死滅をはじめます。スポーツ選手だけでなく、すべての人の健康の必須栄養素であるビタミンとミネラルは、常に満たされている状態にすることが大切です。
目次
ビタミン・ミネラルとは?
ビタミンとミネラルは、もっとも重要な必須栄養素です。不足すると身体的・精神的に様々な機能低下が起こります。その主な役割は、酵素の補助として脂質、タンパク質、糖質の消化吸収や代謝に関わります。
また両者は協力関係にあるので、ビタミンはミネラルがないと働けません。総合力で機能するので1つの成分でも欠けると、全体の働きが低下する特徴があります。この特徴は「リービッヒの桶」または「リービッヒの最小律」といわれ、ビタミンやミネラルを摂取するときの基礎的に知識になっています。
アミノ酸、BCAA、HMBカルシウム、コラーゲン、プロテオグリカンなど、ほかのサプリメントの効果を最大限に引き出すには、ビタミンとミネラルが満たされていることが前提条件です。特に運動することで、ビタミンやミネラルの消費や流出が多くなります。
ビタミンの特徴・種類・働き
ビタミン3つの特徴
- 代謝をサポートする
- 水溶性と脂溶性がある
- 体内で合成できない
代謝をサポートする働き
ビタミンの主な働きは、タンパク質・糖質・脂質の代謝(*1)をサポートすることです。その種類は現在13種類あり、機能性で分類されています。成分や分子構造の違いではなく、同じ働きをする成分を同じビタミンとしています。例えば、α-カロテン、β-カロテン、レチノールなどがビタミンAに分類されています。
水溶性ビタミンと脂溶性ビタミン
ビタミンは「水溶性」と「脂溶性」にも分けることができます。水に溶ける性質をもつ水溶性ビタミンは、B群(B1、B2、B6、B12、葉酸、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸)、ビタミンCの9種類です。
体内に貯めておくことができず、必要以上にとっても尿と一緒に排出される特徴があります。摂取後3時間ほどで血中濃度がピークに達し、6~24時間ほどでなくなるため、継続的な摂取が必要です。
脂溶性ビタミンは脂で溶ける性質があり、ビタミンA、D、E、Kの4種類あり、肝臓や脂肪に蓄えることができる特徴があります。しかし許容量を超えて摂取すると、過剰症を起こす恐れがあるので、サプリメントの利用には注意が必要です。食事と一緒にとることで吸収率が高まります。
体内で合成できない!
ビタミンは代謝に重要な働きをしているにも関わらず、体内でつくることができない特徴があります。そのため食事やサプリメントで摂取するしかありません。特に体内に貯めることができない水溶性ビタミンは、毎回の食事でとることをおすすめします。
ビタミンの種類と働き
ビタミンの主な働きは、補酵素として代謝をサポートすることです。(*1)代謝とは「体内で起こる生化学反応」の総称で、分解や合成により栄養素を変化させることです。代表的なものにエネルギー代謝があり、糖質や脂質がエネルギーに変化させる工程をいいます。新陳代謝は古い細胞が分解され、新しい細胞がつくられる一連の変化をいいます。各ビタミンの詳しい働きは「ビタミンの種類と効果」をご覧ください。
脂・水 | 名称 | 推奨量 | +のこと (正常量) | -のこと (過不足) |
脂溶性 | ビタミンA | 0.90mg | 免疫強化、成長促進など | 脱毛、皮膚乾燥、前立腺肥大等 |
水溶性 | ビタミンB1 | 1.40mg | 精神安定、筋肉正常化 | 甲状腺ホルモン、インスリン減少等 |
水溶性 | ビタミンB2 | 1.60mg | 肌粘膜保護、眼精疲労 | 発育阻害、口内炎、皮膚炎症など |
水溶性 | ビタミンB6 | 1.40mg | 動脈硬化・神経障害予防 | 筋肉機能不全、感覚機能障害など |
水溶性 | ビタミンB12 | 0.0024mg | 集中力記憶力UP、貧血 | 動悸、息切れ、関節痛、肩こり等 |
水溶性 | ナイアシン | 15.0mg | 血液循環、中性脂肪除去 | ネガティブ、血糖値尿酸上昇など |
水溶性 | パントテン酸 | 5.00mg | 傷の早期治癒、関節痛緩和 | 筋肉痛、知覚異常、疲れやすさ等 |
水溶性 | 葉 酸 | 0.24mg | エネルギー代謝、鎮静剤 | 悪性貧血、呼吸器不全など |
水溶性 | ビオチン | 0.05mg | 筋肉痛や皮膚炎の緩和 | 湿疹、脱毛、神経痛など |
水溶性 | ビタミンC | 100mg | 抗酸化、コラーゲン生成 | 関節痛、傷の治り遅いなど |
脂溶性 | ビタミンD | 0.0055mg | 骨の合成、VAの吸収 | 骨軟化症、骨粗鬆症など |
脂溶性 | ビタミンE | 6.50mg | 抗酸化、酸素量増加 | 筋肉硬直、治癒力低下、腰痛等 |
脂溶性 | ビタミンK | 0.15mg | 体内出血の防止 | 貧血、骨軟化症など |
ミネラルの特徴・種類・働き
ミネラルの特徴
現在地球上では、118種類のミネラル(元素)が発見されています。その中で生命維持活動に欠かせない16種類が「必須ミネラル」に指定されています。さらに欠乏することのない3種類を除き、13種類が食品摂取基準の設定がされています。
- 代謝作用や生理作用に関わっている
- 多量ミネラルと微量ミネラルがある
- 体内でつくることができない
ミネラル3つの働き
ミネラルの働きは「身体の構造成分」「代謝作用サポート」「整理作用」の3つに分けることができます。カルシウムやマグネシウムは骨や歯を構成し、鉄やリンはタンパク質と結びつき体成分になります。
生化学反応「代謝」は、マグネシウム、亜鉛、要素などのミネラルとビタミンがサポートします。筋肉の収縮や神経伝達などの生理作用は、カルシウム、ナトリウム、塩素、マグネシウムが関わっています。
多量ミネラルと微量ミネラル
1日の必要量が100mg以上か以下かで、多量ミネラルと微量ミネラルに分類されます。多量ミネラルには、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リンがあります。微量ミネラルには、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンがあります。
体内では作ることができない!
ミネラル不足は、運動機能や代謝の低下につながります。偏った食事やダイエットによる不足や、運動などでの発汗による流出で不足します。反対に過剰に摂取することでも体調不良を招きます。栄養バランスのとれた食事は、適切なミネラルの維持につながります。
ミネラルの種類と働き
必須ミネラル16種類は、単独ではなく互いにサポートしながら働きます。また各ミネラルは、さまざまな仕事に絡んでいます。各ミネラルの詳しい働きは「ミネラルの種類と効果」で説明しています。
元素 | 名称 | 推奨量 | +のこと(正常量) | -のこと(過不足) |
必須 | カルシウム | 650mg | 筋肉や神経を緩和、骨を合成 | 結石、不眠症、骨軟化症など |
必須 | リ ン | 1000mg | 脂質糖質代謝、関節炎緩和等 | 骨脆弱化、甲状腺機能亢進症 |
必須 | カリウム | 3000mg | 細胞に酸素供給、血液pH調整 | 腎炎、尿毒症、低血糖など |
必須 | 硫 黄 | 未策定 | 解毒作用、酵素活性化、代謝等 | 皮膚炎、毛髪・爪の発達障害 |
必須 | 塩 素 | 未策定 | 老廃物を排出、消化作用促進等 | 栄養素吸収阻害、消化不良等 |
必須 | ナトリウム | 600mg | 疲労や熱中症予防、筋肉正常等 | 運動機能低下、動脈硬化など |
必須 | マグネシウム | 370mg | 脂肪代謝、筋肉心臓の正常化等 | 筋力低下、反射能力低下など |
微量 | 鉄 | 7.5mg | 息切れ貧血防止、回復力UP等 | 貧血、倦怠感、頭痛、肝硬変 |
微量 | ヨウ素 | 0.13mg | 脂肪燃焼、エネルギー代謝促進 | 感情鈍化、エネルギー欠乏等 |
微量 | マンガン | 4.0mg | 靭帯・骨・神経効果、筋肉反射 | 運動失調、平衡感覚不全など |
微量 | 銅 | 1.0mg | 鉄の吸収促進、抗酸化酵素補助 | むくみ、心血管障害、骨軟化 |
微量 | コバルト | 0.0024mg | 貧血を防ぐ、ヘモグロビンの合 | ビタミンB12欠乏、肺水腫等 |
微量 | 亜鉛 | 10.0mg | 創傷治癒促進、鋭敏・成長促進 | 味覚障害、食欲不振、皮膚炎 |
微量 | モリブデン | 0.03mg | 脂質と糖質の代謝のサポート等 | 関節痛症状、尿酸値上昇など |
微量 | クロム | 0.01mg | 糖エネルギーの突然の落込防止 | 生殖機能低下、中枢神経障害 |
微量 | セレン | 0.03mg | 抗酸化力向上、細胞若さ柔軟性 | 心筋壊死、心肥大、呼吸困難 |
ビタミン・ミネラルの注意点
摂取してはいけない人
医薬品を服用している方は、ビタミンやミネラルとの影響を考えなくてはなりません。医薬品の作用が低下したり、副作用を引き起こすこともあります。
また過剰摂取により疾患の症状が悪化することもあります。医薬品と病気や薬品との関係は「ビタミン・ミネラルの病気・薬との悪い関係」で説明しています。
ビタミン・ミネラルのFAQ
「ビタミン・ミネラルのQ&A」で下記の質問に回答しています。
Q:V&Mの欠乏症とは何ですか?症状は?
Q:V&Mの過剰症とは何ですか?症状は?
Q:医薬品とビタミンの違いは何ですか?
Q:脂質代謝に関係するビタミンは?
Q:糖質代謝に関係するビタミンは?
Q:タンパク質代謝に関係するビタミンは?
Q:皮膚や粘膜に関係のあるビタミンは?
Q:錠剤タイプと液体タイプに違いは何ですか?
Q:摂取するタイミングはいつですか?
Q:ビタミンは13種類だけですか?
Q:ミネラルは16種類だけですか?
Q:妊婦に必要なもの、害のあるもの
Q:一般食品だけでは不十分ですか?
Q:サプリメントを常用する問題点は?
Q:なぜ別名がいろいろあるのですか?
ビタミンとミネラルの完全ガイド!のまとめ
ビタミンやミネラルは、身体機能の維持に欠かせない「必須栄養素」です。バランス良く食べるとは、炭水化物、タンパク質、脂質だけでなく、ビタミンやミネラルの「バランス」も考えるということです。
エネルギー代謝やそれをきちんと消費するには「ビタミン」と「ミネラル」が必要不可欠です。それらの不足により、疲れやすい、体がだるい、頭痛がする、肩こり、眼精疲労などの「不定愁訴」の症状が出ることがあります。心当たりがある方は「ビタミン」「ミネラル」の不足がないか、ぜひ意識してみてください。
管理栄養士:山本亜由美(AYU)監修
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