プロテオグリカン7つの効果と関節炎改善機能!

 

コラーゲンやヒアルロン酸をしのぐ新成分といわれる「プロテオグリカン」は、1980年代から軟骨を修復することで注目されていました。しかし当時は研究用試薬として1グラム3000万円もしたため、様々な可能性を秘めながら研究が進まなかった歴史があります。 今では開発研究も進み、一般でも活用できるように・・

プロテオグリカンとは?

1998年、弘前大学医学部の高垣啓一教授が、サケ鼻軟骨からプロテオグリカンの抽出に成功したことで状況は一変しました。研究が進む中、関節痛や関節炎の改善効果だけではなく、再生医療や免疫医療、美容効果やアンチエイジングへの可能性が広がりました。

プロテオグリカンとは?

プロテオグリカン 軟骨細胞 細胞外マトリックス

プロテオグリカンは、糖鎖とタンパク質が結合した「複合糖質」または「糖タンパク質」に分類されます。複雑な高分子構造をしているため、分析、抽出、機能性研究は難解なものでした。

軟骨成分としてヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸が有名ですが、それらの多糖類(グリコサミノグリカン)は単体で働いているわけではなく、プロテオグリカンを構成する成分の1つとして存在しています。

高い弾力性のしくみ

軟骨プロテオグリカン

プロテオグリカンの構造は、コアタンパク質を芯にして、コンドロイチン硫酸などの直線状の糖鎖が連結してブラシのようになっています。

それによりヒアルロン酸の130%という保水力(1gで6リットルの吸水力)をもち、それが高密度で存在することで、高い弾力性やクッション性が保たれます。

プロテオグリカン3つの種類

プロテオグリカンは、皮膚、骨、軟骨、腱、血管、脳など体のあらゆるところにあります。存在場所によって構造と機能性が異なり、その違いから3つに分類され、すでに20種類ほどが発見されています。

  • 細胞膜型プロテオグリカン:細胞膜に存在し、細胞の異常を免疫に伝達
  • 軟骨型プロテオグリカン:ブラシ型で弾力性と柔軟性をつくり最も多い
  • 細胞内顆粒型プロテオグリカン:細胞内に散在する
プロテオグリカンの構成割合(%:乾燥重量)
有機物の割合 皮 膚  腱 軟 骨 靭 帯 大動脈  骨 象牙質
コラーゲン 71.4 85.3 52.5 16.4 29.5 25.6 20.2
エラスチン 1.7 5.3 0 75.3 33.8 0 0
プロテオグリカン 5.7 2.6 32.8 1.2 4.2 0.2 0.6
無機物 2.9 1.3 4.9 1.2 2.9 72.2 77.5

プロテオグリカンの7つの効果

プロテオグリカンには、少なくても代表的な7つの効果が確認されています。

  1. 軟骨再生促進効果
  2. ひざ関節痛の緩和効果
  3. 抗炎症抑制効果
  4. 骨代謝異常改善効果
  5. 細胞増殖促進効果
  6. 肌のトラブル改善効果
  7. 免疫機能の向上作用

プロテオグリカンオの効果は上記に加え、細胞のよみがえり因子で知られるEGFに似た働きがあることも分かっています。またコラーゲン産生促進作用ヒアルロン産生促進作用も確認されており、上記の効果にも大きく影響しています。

*EGF(上皮細胞増殖成長因子)、EGF様(表皮細胞増殖促進効果)

1、軟骨再生促進効果

軟骨分化促進作用

軟骨は骨の先端を覆い、関節をスムーズに動かし、関節にかかる衝撃を和らげます。軟骨の重要機能性である弾力性は、水、コラーゲン、プロテオグリカンといった軟骨基質で構成されます。

その機能性は、ほぼ2つの理由で低下します。1つは加齢による軟骨細胞の減少、コラーゲンやプロテオグリカンの変性、軟骨基質の水分含有量の低下です。もう1つは激しい運動で、修復が損傷に追いつかないハードワークです。

軟骨再生3つの作用

軟骨石灰化抑制作用

20歳台後半から、軟骨の修復力が低下します。それを補う成分として、プロテオグリカンは3つの軟骨再生促進作用が確認されています。

  1. 軟骨前駆細胞増殖促進作用
  2. 軟骨分化促進作用
  3. 軟骨石灰化抑制作用

このプロテオグリカンの軟骨再生促進作用によって、アスリートの関節障害の対応だけではなく、老人性関節炎の応用、軟骨損傷回復作用も期待されています。

2、ひざ関節痛の緩和効果

実証実験の概要

ひざ痛改善結果

316名中86%の人に、ひざ痛の改善効果が認められました。青森県産業技術センター弘前地域研究所では、男性163名、女性153名、平均年齢50.6歳(40~77歳)の人に、1日1回プロテオグリカン入りのサプリメント錠剤を1ヶ月間飲んでもらい、被験者の抱えている膝の痛みや不快感を100段階で評価し、スコア化してもらいました。

実証実験の結果

サプリメント摂取前は、39.3(±18.0)だった膝の痛みが、1ヶ月摂取した後のスコア平均が21.0に軽減されました。その差は18.3ポイントになり、全被験者の86%の方が改善されました。その中でもスコアが30以上軽減した人は88名(28%)を占め、内25名の痛みが0~1レベルまで軽減した。

3、抗炎症作用

  1. 抗炎症作用:抗アレルギー作用、潰瘍性大腸炎の治療効果

過剰炎症を抑えるメカニズム

細胞が損傷すると、細胞機能を助ける「ヘルパーT細胞」が集まってきます。その一種である「Th17」は、白血球(好中球やマクロファージ)を集めて、炎症物質であるケモカインを作り出します。プロテオグリカンはこの「Th17」をコントロールし、暴走を制御する「制御性T細胞」を活性化させます。

紫外線による肌の炎症の修復機能

プロテオグリカンと角質水分量

人の肌に近いヘアレスマウスに6ヶ月間紫外線を照射して炎症を作りました。日焼けして肌が老化した状態です。そこに4種類のプロテオグリカンを5週間経口摂取させ、6~8週目に炎症の変化を測定しました。

その結果、プロテオグリカンを摂取させた群では、すべて有意な改善がみられました。中でも分子量の大きい方が良い結果がでました。

潰瘍性大腸炎の劇的な改善効果

潰瘍性大腸炎出血スコア

難病とされる潰瘍性大腸炎でも、一定の効果が確認されています。潰瘍性大腸炎は大腸がただれて、腹痛や慢性的な下痢を起こす非感染性の大腸炎です。この症状に加えて口腔から肛門にいたる消化器全般に潰瘍を起こすのがクローン病です。

原因や原因物質も特定されておらず、一種の自己免疫反応と考えられています。16~17歳での発症が多く、生活が大きく制限されます。

秋田県大館市総合病院の吉原秀一医師は、潰瘍性大腸炎で粘膜が炎症でただれている腸管内部の保護を、プロテオグリカンのゲル化機能が解決しないかと考えたのです。実験は人工的に潰瘍性大腸炎を起こしたラットで行われました。結果として、プロテオグリカンを投与したラット群に明らかな改善がみられました。

4、骨代謝異常改善作用

  1. 骨代謝異常改善作用:骨粗鬆症治療効果、骨密度改善作用

骨にも重要なプロテオグリカン

骨内成分の減少

骨にもプロテオグリカンが含まれます。軟骨プロテオグリカンよりも分子量が小さいバイグリカンやデコリンと呼ばれるものです。

骨重量(水分は除く)の約30%がⅠ型コラーゲンといわれるファイバープロテインで、骨の土台を支えます。プロテオグリカンはそのファイバープロテインを支える役割があると考えられます。

骨代謝の低下や骨粗鬆症では、このファイバープロテインが流出してカルシウムの定着率(骨密度)が低下します。その原因は加齢によるコラーゲン産生力の低下です。そこで骨粗鬆症患者の尿検査をしたところ、驚きの結果がでたのです。骨粗鬆症の人の尿からプロテオグリカンの分解物であるGAG(グルコサミノグルカン/コンドロイチンの連鎖)が3.9mg/day検出されたのです。これは健常者の1.6mg/dayの2倍以上だったことから、プロテオグリカンが骨代謝に何らかの関係性があると思われます。

骨の強度を高めるプロテオグリカン

プロテオグリカン投与後の骨強度

プロテオグリカンは0.01%と微量しか含有しませんが、加齢による減少率はもっとも高くなっています。コラーゲンやエラスチンなどのタンパク質が減少するよりも、高い値で低下していきます。そこに着目した弘前大学などの研究者は、骨粗鬆症のラットにプロテオグリカンを濃度別に与えたところ、含有率が高いほど「骨の強度」(骨のしなう強度)が高くなっていたのです。

5種類のラットが用意されました。開腹しただけで卵巣を摘出しなかった【sham】、卵巣を摘出した【ovx】、卵巣を摘出しプロテオグリカンを濃度別に与えた3種類【low】【mid】【high】4週間経過したのち骨強度を測定しました。棒グラフが短いほど骨強度が高くなります。その結果プロテオグリカンの濃度が高いほど、骨強度が高くなったことが分かります。

5、細胞増殖促進作用

  1. 細胞増殖促進作用:肌再生アンチエイジング作用

プロテオグリカンのEGF様作用

EGFは上部組織の増殖や成長のカギを握っている重要な因子です。プロテオグリカンにはEGF様領域といわれるEGFのアミノ酸配列に似た部分があります。その作用により、肌再生を促進させアンチエイジング効果が期待されます。(下記、6、肌トラブル改善作用と重複)

6、肌のトラブル改善作用

  1. 保湿作用:シワやタルミの改善作用、アトピー性皮膚炎の改善

プロテオグリカンは、肌の細胞増殖、ヒアルロン酸やコラーゲンの産生促進、高い保水性、肌荒れ防止、シワの抑制と改善、メラニン生成の抑制、色素沈着の抑制、弾力性UPなどの作用が確認されています。

EGF様作用による表皮細胞増殖

プロテオグリカンの細胞増殖作用

EGF(Epidemal Growth Factor)とは上皮細胞増殖因子または成長因子と呼ばれ、生体細胞の増殖と成長に関係しています。ヒト角化細胞を用いた試験では、プロテオグリカンの摂取量に応じて、EGF様作用の増加が確認されました。

EGFは20歳後半から急激に減少をはじめ、70歳では20歳代の6分の1まで低下、細胞成長を鈍化させターンオーバーを遅らせる要因になります。

ヒアルロン酸の産生促進作用

プロテオグリカンのヒアルロン酸産生促進

ヒアルロン酸は皮膚の潤いを保つ重要なマトリックスです。ヒトの正常真皮線維芽細胞を用いた試験では、プロテオグリカン摂取量に応じて、ヒアルロン酸産生の増加が確認されました。

ヒアルロン酸は多量の水分を抱え込み、コラーゲンやエラスチンなどのすき間を埋めてハリや潤いを維持します。ヒアルロン酸の分解速度は速く、加齢で産生量が減少すると加速度的に肌のみずみずしさを損ないます。

Ⅰ型コラーゲン産生促進作用

プロテオグリカンとコラーゲン産生促進

Ⅰ型コラーゲンは真皮層の7割を占め、その老化や減少がシワやタルミの原因になっています。ヒトの正常真皮線維芽細胞を用いた試験では、プロテオグリカン摂取量に応じて、Ⅰ型コラーゲン産生が増加しているのが確認されました。

またコラーゲンの代謝を高めることで、色素の沈着を抑制することができます。更にファイバープロテインであるⅠ型コラーゲンは、肌の弾力性にも大きな影響を与えています。

スポーツ界が注目するケガをしないための成分「ファイバープロテイン」

7、免疫機能の向上作用

免疫力=糖鎖量(プロテオグリカン)

プロテオグリカンのグリカンは「糖鎖」を意味します。糖鎖は糖が鎖状につながったもので、代表的なものにはヒアルロン酸(ムコ多糖体)やコンドロイチン硫酸などがあります。糖鎖は体内のすべての細胞の表面を覆い、細胞の異常を識別して、いち早く免疫細胞に伝達する機能があります。今この糖鎖が2~3割程度減っている傾向があり、免疫細胞を出動させる機能が低下していともいわれています。

つまり「免疫力=糖鎖量」といえます。

アレルギー反応の抑制

免疫の過剰反応で起こる疾患にアレルギーがあります。例えば脳のアレルギーである多発性硬化症は、プロテオグリカンの投与で症状が軽減することが実験で明らかになっています。免疫反応では、免疫細胞がサイトカインという物質が増加します。これが過剰に放出されると自身の細胞を傷つけるサイトカイン・ストーム現象が起こります。これをコントロールするのが、リンパ球の一種の「T細胞」です。

T細胞にはがん細胞やウィルスを殺すキラーT細胞や、他の細胞の機能をサポートするヘルパーT細胞があります。ヘルパー細胞はTh1、Th2、Th17の3種類があり、プロテオグリカンは「Th17」に作用します。Th17は白血球(好中球やマクロファージ)を集めてケモカインという炎症物質を作り出します。同時に炎症の暴走を抑制する制御性T細胞も活性化します。プロテオグリカンはTh17をコントロールするとともに、制御性T細胞も活性化することで、アレルギーを抑制する機能性があるのです。

その他の効果

その他、様々な効果が分かっています。今後研究がすすむことで、さらに可能性が広がると思われます。

活性酸素の抑制効果

老化や生体細胞にダメージを与えるものとして「活性酸素」があります。白血球(好中球やマクロファージ)の活性により、通常の酸素よりも分子内の電子が1つ足りない不安定な酸素です。ウィルスや病原菌に取り付き電子を奪い取り、不活性化させる免疫機能の1つです。

しかし必要以上に発生すると、正常細胞にも攻撃性を発揮し「さびる」現象を引き起こします。プロテオグリカンは活性酸素を発生しにくい、細胞の修復をしやすい免疫環境をつくる点でも注目されています。

肥満の抑制効果

近年の研究で、脂肪細胞がサイトカインの一種である「アディポカイン」を発生させることが分かりました。アディポカインは細胞障害性が強く、少量であれば免疫機能に健全な刺激を与えてくれますが、過剰発生によって食欲を抑えるレプチンというホルモンの感受性が弱まり、過食傾向が高まり悪循環に陥ります。

これが更にすすむと、体全体に炎症反応が起こり、免疫抑制が混乱することで、Ⅱ型糖尿病へと罹患(りかん)していきます。

Ⅱ型糖尿病の改善効果

軽度のⅡ型糖尿病において、改善効果が報告されています。この実験ではプロテオグリカンを投与することで、免疫環境の正常化、炎症の軽減などが確認されています。

どれがもっとも効果的?

よくある質問で、関節に効果がある成分として、プロテオグリカン、コンドロイチン、ヒアルロン酸、Ⅱ型コラーゲン、グルコサミンなどがありますが、どれがもっとも効果がありますか?というものがあります。

その答えは、プロテオグリカンがヒアルロン酸やⅡ型コラーゲンに相互作用して、機能性を最高のものに高めるということでしょうか。

*詳細なデータに関しては、下記の参考文献の参照ください。

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