野球の怪我で多い5つの部位と12の怪我ランキング

野球と怪我

 

野球は非常に人気の高いスポーツだ。年齢を問わず競技人口も多く、国民的スポーツと言っても過言ではない。プロ野球選手や高校球児の活躍を見て、憧れる子どももたくさんいるだろう。

しかし野球選手は、その注目の裏で多くは怪我に悩まされている。怪我が完治しないままプレーを続け、再発を繰り返し、怪我から復帰できずに引退する選手も少なくない。

それはプロの選手に限った話ではない。野球をする中で不調を抱えた経験は、多くの人が持っているだろう。怪我が原因で思うようなプレーができずに悩む人もいるはずだ。

ここで紹介するのは、野球選手が怪我しやすい5つの部位と、部位別の代表的な怪我の種類だ。怪我への適切な対処法も併せて記していく。怪我からの迅速な回復を目指すなら、間違った方法で取り組むのは厳禁だ。怪我についての正しい知識を得て、一日も早く復帰するための足掛かりとしてもらいたい。

肩に起こる怪我

「野球肩」という言葉を知っている人は多いだろう。野球の投球動作によって発症し、酷使によりもたらされる障害だ。これは野球で起こる肩の怪我の総称であり、野球肩という名前の怪我があるわけではない。

肩には細かい筋肉や靭帯などが集まり、体の関節の中で最も広範囲に動かせる。その分、必要以上の力がかかると怪我になりやすい。野球における怪我の中で、肩の怪我は多くの割合を占める。

肩関節唇損傷

肩関節唇(かんせつしん)は、肩の受け皿となる骨を覆っている線維性の軟骨だ。肩関節唇障害は、胸を張り腕を前に出す瞬間やリリース時に、関節の内部に痛みが出る。リリース時にガクッと力が抜ける感覚があり、力が入らなくなるケースも多い。肩を安定させる肩関節唇が、肩甲骨から剥がれるスポーツ障害だ。

この損傷で上腕二頭筋に力が入らなくなり、肩を安定させられずに脱力する症状となる。症状が持続する場合は手術を行うが、肩のストレッチなどの運動療法で軽快する場合も多い。投球フォームのバランスを見直すことも重要だ。

インピンジメント症候群

インピンジメントとは「衝突」という意味である。投球時の肘がトップポジションにある時、腕の骨と肩甲骨の骨がぶつかる。その間に腱板や肩峰下滑液包などが挟まれ、痛みが起こるものだ。

胸を張り腕を前に持ってくる時に、肩の上部に痛みが起こったり、引っかかる感覚を覚えたりする。無理をして投げ続けると、安静時にも痛みが出たり、腕が上がらなくなってしまう。肩甲骨周りの硬さによるフォームの乱れが原因なので、しっかりとストレッチを行い改善しよう。

腱板損傷

投球時に肩が後ろに引かれると、肩の内部や後部に痛みが発生する。腕が後ろに残りすぎることで、肩の後方で腱板が関節に挟まれるのが原因だ。腱板損傷はインターナルインピンジメントとも呼ばれる。

重症化すると日常の動作でも腕が上がらなくなり、安静時にも疼痛が起こるようになる。患部を安静にして痛みを改善した後に、腱板の筋力回復トレーニングも行う。怪我の状態によっては、復帰に時間がかかるため、根気よく完治を目指したい。

肘に起こる怪我

野球では肘の怪我も非常に起こりやすい。速い球を投げたり投球フォームが崩れたりしていると、肘に過度のストレスがかかり発症しやすくなる。こういった投球による肘の障害を総称して「野球肘」と呼ぶ。

肘の周囲にある組織はストレスに耐える働きをしている。しかし繰り返されるストレスで、筋肉や靭帯は大きく損傷を受ける。肘は体重を支える荷重関節ではないため、もともと丈夫な構造ではない。

内側側副靭帯損傷(内側型野球肘)

最初は肘の内側に違和感を覚え、次第に痛みを感じるようになっていく。肘の内側に痛みが現れるのは、胸を張った時やリリースの直後である。野球選手が肘の痛みで受診する場合に、最も多いケースがこの怪我によるものである。

肘の内側にある靭帯が繰り返し引っ張られ、骨が剥がれて靭帯が緩んだ状態になる。放置すると骨が変形し、完治せずに肘が緩んだままとなってしまう。医療機関で詳しい検査を行い、投球を休止してフォームや体の硬さを改善するのが望ましい。

離断性骨軟骨炎(外側型野球肘)

投球のリリース時や胸を張った時に、肘の外側に痛みを感じる。肘の曲がる部分の軟骨を痛めるもので、肘の曲げ伸ばしができずに気づくこともある。肘内側の痛みに比べて重症化しやすいため、より一層の注意が必要だ。

肘関節に過度なストレスがかかると、軟骨や骨に血流障害が生じ、骨と付着する軟骨が壊死して剥がれる。症状が進行すると日常生活にも支障が出てしまう。多くの場合で手術が必要となるため、肘の外側に違和感があればすぐに医療機関を受診しよう。

肘頭疲労骨折(後方型野球肘)

ボールを投げて肘が伸びるフォロースルー時に、肘の後部で骨同士が衝突し、これが繰り返されて疲労骨折を起こす。上腕三頭筋に強い力で引っ張られることで起こるケースもある。骨同士の衝突によって骨のかけらができたり、骨がこぶ状になり肘の曲げ伸ばしができなくなったりする場合もある。

過度な運動に加え、投球フォームの異常や体の硬さもこの怪我の原因となる。医療機関で診断を受けたら安静を心がけつつ、ストレッチや筋力トレーニングも組み合わせて行う。重症の場合は手術による治療を勧められることが多い。

腰・股関節に起こる怪我

腰痛に悩む野球選手は驚くほど多く、もはや腰痛は野球選手にとっての職業病だ。野球選手は何も運動をしていない人に比べ、腰痛の発症率が3倍も高い。投げる・打つ・守るの動作で体幹を大きく動かし、それが繰り返されることで腰に負担がかかるのである。

野球のパフォーマンス向上と怪我防止には、股関節の柔軟性が非常に重要視される。腰と同じく体重を支えている股関節は、あらゆる動作の支点となる部位である。股関節は体重を支える役割を果たしながら、下半身にかかるストレスを受け続けるため、高い柔軟性が求められるのだ。

体の中心部にある腰まわりと股関節は、相互に密接した働きをしている。腰をねじる・回すなどの動作は、一見腰が主体の動作のように見えるが、実は股関節の回旋運動によるものなのだ。つまり、股関節が硬い状態だと腰椎に負担がかかり、腰痛を引き起こしてしまうことになる。

椎間板ヘルニア

椎間板とは腰椎の骨と骨の間にある軟骨で、衝撃を吸収するために水分を多く含む。過度な運動により水分が抜けて変性した椎間板が、外に飛び出し神経を圧迫して腰痛や坐骨神経痛を起こす。椎間板ヘルニアの原因となる椎間板の変性は、野球選手のおよそ6割に見られるほど多発している。

よほど重度のヘルニアでなければ、手術は行わず保存療法を採用することが多い。コルセットを装着することもあり、姿勢を整えたり腰への負担を避けたりしながら回復を目指す。体幹の筋肉を鍛え、ストレッチで柔軟性を高めることも非常に重要だ。

股関節痛

股関節には大きな動きと体重がかかり続けるため、気づかないうちに大きなストレスを抱えやすい。股関節の怪我の中でも頻発しているのが、足の付け根から外側が痛む股関節唇損傷だ。これを放置して悪化させると、軟骨がすり減ってしまう変形性股関節症へと発展してしまう。

初期段階であれば保存療法をとり、姿勢の見直しやストレッチなどで改善を目指す。重症化すると手術が必要となり、競技への復帰までに最低でも4ヶ月以上かかってしまう。股関節は発見が遅れがちな怪我が多いので、痛みや違和感を感じた時点で早急に医療機関を受診しよう。

手・手首に起こる怪我

野球において手や手首に起こる怪我は、突発的な外傷である場合が比較的多い。イレギュラーな捕球でボールが手に当たったり、スライディングの際に手をついて怪我をするケースが考えられる。バッティングのスイング時やデッドボールを受けたときにも発生する。

有鈎骨骨折

有鈎骨(ゆうこうこつ)とは、手首の小指側にある骨である。バットのグリップに当たるのが有鈎骨の部分であり、スイング動作時や打ち損じなどの衝撃が有鈎骨に直接かかる。このため骨折しやすく、痛みと同時にしびれを伴うこともある。

グリップエンド骨折とも言われ、発症すると握力が大きく低下する。放置すると腱の断裂や神経麻痺を招くため、手術により骨折した有鈎骨を摘出する。その後リハビリを経て、約2ヶ月ほどで競技に復帰できる。

TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷

TFCC(三角線維軟骨複合体)とは、小指側の手関節部分にある軟骨状の組織のことを指す。バッティング時に手首をひねるなどの動作で手首を捻挫し、小指側に手を曲げて痛みが増すようであればこの怪我が疑われる。体の末端に位置する手関節部分は血流が乏しく、一度痛めると症状の改善が難しい。

損傷を受けたら直ちにPOLICE処置を行い固定する。怪我が軽度であれば、テーピングなどで関節を保護しながらのプレーは可能だ。症状の軽減が見られない場合は手術が必要となるので、悪化する前に医療機関を受診するべきである。

足部に起こる怪我

走塁やスライディングなどで瞬間的な走力を必要とされる野球では、足にかかる負担も見過ごせない。アクシデントによる外傷としての怪我も多いが、慢性的な障害として発症するケースもよく見られる。野球には多くのポジションが存在するが、その違いを問わず起こるのが足の怪我である。

足首の捻挫

足首の捻挫はどんなスポーツにも頻発し、野球の場合でも多く見られる怪我だ。足首を内側にひねり靭帯を損傷するケースが最も多く、痛みや腫れが起こり内出血を生じる。ジャンプからの着地時やベースの踏み損ないのほか、スライディング時に他の選手やベースとの接触でも発生する。

受傷直後にPOLICE処置を行い、患部を冷却して安静にする。初期の対処が遅れると完治まで長引き、再発も起きやすくなる。足首の柔軟性を維持するために、ストレッチを中心としたトレーニングで改善を図る。

膝痛

野球選手の膝にはさまざまな形でストレスがかかる。投球時に膝に体重がかかるピッチャーや、しゃがみ姿勢を続けるキャッチャーはもちろん、他のポジションでも急なジャンプ動作などで負担がかかる。バッティング時に体をひねる動作でも、膝は強いストレスを受ける。

膝には前十字靭帯や内側側副靭帯などの靭帯や、クッションの役割を果たす半月板などが集まっている。どの部位も損傷すると治療に時間を要するため、違和感や痛みが軽いうちに医療機関を受診しよう。ウォーミングアップやクールダウンをしっかりと行い、入念なストレッチに取り組むことで、膝の柔軟性を高く保つことができる。

外傷と障害

スポーツでの怪我は「外傷」と「障害」に二分される。外傷とは、アクシデントによる一度の衝撃で受傷するものである。障害は、ストレスが繰り返しかかり、徐々に発症し慢性化するものだ。

野球の場合、その怪我は障害であるケースが圧倒的に多い。原因は、野球の最大の特徴である投球動作、そしてバッティング動作である。オーバーユースとなる動作が、野球にはとても多い。

何度も繰り返される投球動作により、肩や肘には強いストレスがかかる。バッティングやピッチングの動作では、体を大きくひねるために腰への負荷が増す。このように特定の部位にストレスがかかり、それが継続して障害を引き起こすのだ。

このような障害を抱えた選手が、痛みを我慢し続けて悪化させるケースも非常に多い。プレー中に違和感を覚えたら、軽視せず自分の体の状態を確認しよう。そしてできるだけ早く医療機関を受診するべきだ。

野球に多い怪我のまとめ

慢性的な障害が起きやすい野球では、日頃の体のケアが非常に重要だ。これまでに紹介したどの部位も、ストレッチや筋膜リリースで柔軟性を高めることで、怪我のリスクを大きく減らすことができる。

投球やバッティングのフォームの見直しも欠かせない。正しいフォームは関節への負担が少なく、怪我の起きにくい状態を作り出せる。怪我からの早期回復にもつながるので、今一度自分のフォームを確認しよう。野球の怪我は復帰まで長期化するものも多いが、焦らず完治を目指して怪我に打ち勝ってほしい。

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