骨端症(こったんしょう)は成長期におこる「軟骨障害」です。軟骨は骨と比べて再生力が低くく、回復しづらい組織です。骨端症で軟骨機能が失われると、関節が衝撃を吸収できずさまざまな障害を起こします。
骨端症の多くは自然治癒しますが、無理をすると軟骨が壊死して、生涯後遺症に悩むことがあります。また欠けた軟骨が浮遊すると、可動制限と激痛をともなう「離断性骨軟骨症(りだんせいこつなんこつしょう)」を発症します。重症化や後遺症に悩まされないために、しっかりした対処が大切です。
目次
成長期に多い【骨端症】
軟骨損傷は年齢を問わず発生しますが、骨端症は骨が完成していない成長期に多く発症しています。成長期の軟骨(成長軟骨)は、強度や耐久性が低いため、筋肉の牽引力に耐えきれず、剥離や遊離を起こしやすい特徴があります。 成長期以外での軟骨障害は、高齢者に多く報告されています。
軟骨の損傷「骨端症」
骨端症(こつたんしょう)とは?
骨端症は、成長期にみられる成長軟骨の障害で、骨端部が血行不良により壊死(えし)する病気の総称です。成長期は軟骨再生力が高いので、多くは自然に治癒します。しかし適切な処置を怠ると、症状が悪化し後遺症が残ることもあります。
骨端症の症状
軟骨の壊死により、痛み、炎症、水腫、腫れ、関節の可動域制限などが起こります。また骨端症が発生する軟骨は、年齢により異なる傾向があります。
- 小学生低学年~高学年・・・かかとの骨端症が多い
- 小学生高学年~中学生・・・ひざの骨端症が多い
- 中学生~高校生・・・・・・腰の骨端症が多い
骨端症の原因
原因の多くは「使い過ぎ」です。軟骨強度が低い成長期に、軟骨を酷使することで起こります。股関節、ひざ関節、かかと、足の甲などで多く発症するのは、運動で大きな力がかかりやすいからです。
骨端症の種類
骨端症は、発症する部位によって病名が変わります。
- かかとの骨端症「シーバー病(セーバー病)」「踵骨骨端炎」
- 足の甲の骨端症「第1ケーラー病」
- 足裏の指付根の骨端症「第2ケーラー病(フライバーグ病)」
- 膝関節の骨端症「オスグット病」
- 股関節の骨端症「ペルテス病」
- 肘関節の骨端症「パンナー病」
骨端症の治療法
骨端症の基本治療は「安静」にすることです。運動を制限し、インソールなどで軟骨への負荷を軽減します。軟骨損傷がほかの障害を引き起こしている恐れがあるので、レントゲンやMRIによる検査が必要です。
痛みや炎症が強い場合は、内服薬やブロック注射による処置をします。水が溜まる水腫があるときは、水を抜く処置を行います。自然になくなることもありますが、放置すると悪化する恐れがあるので要注意です。また重度の損傷や後遺症が疑われる場合は、ギブスの装着や軟骨の移植手術を行うこともあります。
骨端症の4つの予防法
同じ運動をしても、骨端症になりやすい人、なりにくい人がいます。個人差は大きいのですが、リスクを高める原因を排除することで、ある程度発症リスクを軽減することができます。
衝撃吸収性を高める!
骨端軟骨にかかる圧力を軽減するには、筋肉や靭帯の柔軟性を高めることが有効です。運動前・運動後のストレッチや筋膜リリース、マッサージで柔らかい筋肉を維持できれば、衝撃吸収性が高まります。
体に合った用具を使う!
運動用具の中でも、シューズがもっとも重要です。合わないシューズは体のバランスを崩すため、通常よりも大きな負担が軟骨にかかります。また靴紐の締めすぎも、体の柔軟性や可動域を低下させます。
偏平足の人は骨端症を発症しやすいとされるので、インソールで土踏まずのアーチを維持してください。
オーバーワークをしない!
若い時は回復力が早く、無理もできます。しかし関節周辺の疲れは感じることが難しく、ついつい軟骨や骨に疲労を残します。関節の動きが悪かったり、筋肉にハリがあるようなら休養も必要です。
栄養と休養をしっかりとる!
体の損傷を修復するには、充分な原料(栄養)が必要です。食事もトレーニングのうちなので、バランスのとれた食事に心がけてください。疲れが残っている時はサプリメントなどの活用も検討してください。
軟骨が剥がれ落ちる【離断性骨軟骨炎】
軟骨部分が骨から剥がれ落ちる障害です。2つの骨が混ざり合う関節部は、向かい合った骨の表面が軟骨で覆われています。その軟骨の一部が骨から剥がれて、関節炎を引き起こす障害が「離断性骨軟骨炎(りだつせいこつなんこつえん)」です。
骨端症の一種で、股関節や膝関節、肘関節などで起こります。野球肘やテニス肘でも発生します。
離断性骨軟骨炎の原因と症状
ひざ関節での発生
ひざ関節にはジャンプ・着地・方向転換などで、体重の何倍もの衝撃が加わります。その強力な圧力により「膝離断性骨軟骨炎」といわれるスポーツ外傷を発症します。膝の屈伸時に一定角度を超えて伸展できないロッキングを起こすことがあります。
肘関節での発生
肘関節に大きな負荷とひねりが加わることで発生します。通常は軽症で留まりますが、まれに重症化することがあります。テニス肘、ゴルフ肘、野球肘などが代表例です。
軽度(骨片が遊離していない)の症状は不快感や鈍痛などで、自覚症状がないことがあります。重度(骨片が遊離している)では、痛みや炎症が強くなり、骨片が関節に挟まり関節のズレや可動が制限されます。
3つの離断性骨軟骨炎
骨軟骨片の状態で3つのタイプに分類することができます。
- タイプ1:骨軟骨片が骨本体に付着している状態(浮き上がりなし)
- タイプ2:骨軟骨片が骨本体から浮き上がっている状態(浮き上がり)
- タイプ3:骨軟骨片が骨本体から完全に離れている状態(完全な遊離)
タイプ3は「関節内遊離体」または「関節ネズミ」といわれ、骨片が関節内を動き回り、関節に挟まり炎症を引き起こしたりします。
離断性骨軟骨炎の治療と予防
タイプ1~2の軽度の場合は、安静や固定などで経過を診ることになります。自覚症状があまりないため、見過ごされてタイプ3に移行することがあります。また骨軟骨片にドリルで穴を開け、固定する治療を行うこともあります。
骨軟骨片は完全に遊離している「関節遊離体」の場合は、陥頓症(かんとんしょう)を引き起こす恐れがあるので、摘出手術が行われます。欠損部が大きいときは、軟骨移植手術を行うこともあります。
離断性骨軟骨炎の原因は、一部の関節に対して、何度も強い力が加わることで起きることから、「使い過ぎ」ということになります。その予防法は、骨端症と同じ対策で可能です。
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