ペルテス病は2~10歳の男児に多くみられる股関節の骨端症です。女児よりも男児が5~10倍多く発症します。悪化すると、歩行困難や障害を残すことがあるので、早期に適切な処置をすることが大切です。
ペルテス病の原因と症状
ペルテス病の原因
ペルテスの特徴
成長期に大腿骨頭(だいたいこつとう)の骨化核(こっかかく)が虚血性壊死(きょけつせいえし)を起こして、股関節に痛みや腫れを引き起こします。2つの~10歳(好発年齢4~7歳)の男児に多く、米国の報告では男児750人に1人、女児4000人に1人としています。
原因として、ストレス、ホルモン異常、栄養不足、外傷などが指摘されますが、まだハッキリとは解明されていません。直接的要因として、股関節への血流が不足することで「虚血性壊死」を起こす病気です。大人が発症する類似障害「特発性大腿骨頭壊死症」とは違い、ペルテス病は修復機能が働き3~5年で改善するという特徴があります。
おもな原因説
報告されている原因として、下記があげられます。
1、外傷説
日々繰り返えされる外傷によって血行障害が起こり発症するケースです。まだ未熟な骨頭は損傷しやすく、日々の修復が行われる前に次の損傷が起こることが理由とされます。患者の3割ほどが多動気味(広義のADHD)でされており、女児より男児が多い理由にもなっています。
2、解剖学説
子供の大腿骨頭は、成長軟骨のため骨髄から分離してます。骨髄からの血行路はなく、3本の通常血管によって栄養が運ばれています。しかし6~7歳の男児は、血管が1本しかないことが多く、阻血になりやすいとされています。
3、関節炎移行説
関節炎により関節包内に水がたまることで、血管を圧迫して血行障害を起こすケースです。全体の1~2%ほどが、この関節炎移行型といわれる血管外因子によるものです。
4、血管凝固因子説
血管が固まりやすいことによる発症です。血液凝固の原因は2つあり、1つは遺伝・体質によるものです。もう1つは家族の喫煙によるものです。喫煙率の高い地域では、虚血性心疾患とならびペルテス病の発症が多いことから、この説を支持する研究者が増えています。
5、その他の説
出生時の体重が少ない未熟児に多い、骨年齢が遅滞している低身長児に多い、都市部に多いなどの研究報告もされています。
ペルテス病の症状
おもな症状
おもな症状は、股関節部やヒザ部の水腫による痛みや腫れ、股関節の可動域制限です。初期状態では軽度な痛みなので、気づかずに完治することもありますが、悪化して歩行困難になることもあります。通常は段階的な経過を経て完治しますが、初期段階に骨頭が潰れてしまうと、新たな骨が変形したまま作られるため「変形性股関節症」となり、30~50歳ごろになって痛みや歩行障害が生じることがあります。
4つの病期
1、滑膜炎期
軽い痛みや違和感といった症状で、気が付かないこともあります。X線検査では判断できず、MRIや超音波による診断で変化を捉えることが可能です。
2、壊死期(硬化期)発症から6ヶ月~1年
X線検査でもハッキリと診断できます。成長が停止または扁平化するなど、もっとも潰れやすい時期になります。この時期を適切な対処で過ごさないと、一生涯後遺症に苦しむことにもなります。
3、分節期
血管が再開して修復が開始されます。壊死した骨が分解吸収され、新生骨に置き換えられる時期です。この時期は1~2年ほど続きますが、徐々に潰れる危険性が低下していきます。
4、修復期
修復が完了する時期で、骨頭が潰れる危険性はありません。この時期も1~2年ほどかかります。
ペルテス病の治療と予防法
通常は2~3年以内に血流が改善して完治に向かいます。完治までは最長5年くらい必要です。
軽度の場合は治療せず放置されることがありますが、病巣範囲が半分以上または痛みがある場合は、変形する恐れもあるので装具などの治療が必要になります。股関節に負荷をかけないことがもっとも大切です。
可動域が狭くなっている場合は、牽引治療を行うことがあります。痛みが強い場合は、装具を装着して股関節への負荷を制限する治療が行われます。治療には1年~1年半ほどかかるので、違和感を感じたら早めの診断が必要です。
予防としては、ストレッチで股関節の柔軟性を保つ、股関節の酷使を避ける、疲れをためないことが有効です。あまり体を冷やさず、血行を良好に保つことを意識してください。
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