膝の靱帯にはどんな役割があるの?靱帯損傷が起こる原因と予防法

ひざの靭帯損傷

 

アスリートに起こりやすい靱帯損傷。なかでも膝の靱帯を損傷すると歩行への負担が増し、場合によっては今後のスポーツ人生に大きな影響を与えてしまいます。では、なぜこうしたケガが起きてしまうのでしょうか? その理由や治療法、早期回復に役立つポイントなどをお伝えします。

膝の靱帯損傷とは?

膝の靭帯の種類と役割

靭帯と靭帯断裂

膝につながる靱帯は、前十字靭帯後十字靭帯内側側副靭帯外側側副靭帯の4本があり、膝関節を安定させる働きがあります。膝を前に曲げたり、回したりするために欠かせないものです。こうした靱帯が損傷してしまうと、膝のクッション性が弱くなり、膝にかかる負荷を分散させることができなくなります。

同時に、膝関節の可動域が制限されるため、結果的に関節を痛めることになります。関節の動きが不安定になれば、どんなに筋肉があったとしても踏ん張る力が低下してしまいます。

膝の靱帯症状で起きる症状

靱帯損傷が起きれば、強い膝の痛みを感じ、歩けなくなってしまいます。また膝が動きにくいという可動域の制限を感じることでしょう。前十字靭帯や内側側副靱帯が損傷してしまうと、膝が前の方にずれているように感じたり、膝から下が外側にずれているように感じたりします。

さらに関節内で出血を起こして腫れが目立ちます。こうした急性期の症状は、しばらくして治まるケースがほとんどですが、痛みや腫れがひいたとしても、内部の靱帯が治っているわけではなく、徐々に膝関節の動きが鈍くなったり、ひねったときに痛みを感じたりします。膝から崩れ落ちるような感覚が起きることもあるでしょう。歩行困難な状態が起きたら、できるだけ早い段階で専門医の診断を受けることが大切です。

靱帯損傷が起こる原因

ひざ靭帯損傷の原因

膝の靱帯損傷が起こる原因は、何らかの外力によって、本来とは異なる方向に膝が向くような動作をしてしまう、もしくは、ねじれるような圧力を受けることです。

  1. 他者との接触や激突
  2. 急な方向転換
  3. ジャンプやその着地

膝の靱帯損傷は、スポーツによる外傷から起こるケースが多く、格闘技のように全身で他者と接触する機会が多いスポーツ選手によく見られます。また、バスケットやバレーボール、サッカーといった競技では、急な方向移動が必要だったり、ジャンプをすることが多かったりすることから、膝への負担がかかり、靱帯損傷を起こしやすいとされています。そのほか、転落や交通事故といった衝撃でも靱帯損傷が起こります。

膝の靱帯損傷の治療法と復帰までの期間

保存療法:復帰まで1~3ヶ月

膝にある4本の靱帯のうち、どの靱帯を損傷するかによって治療法が異なります。例えば、太ももにある内側広筋のように、膝の内側を支えている内側側副靭帯が損傷した場合、固定による保存治療となります。

通常2~4週間ほどで痛みや腫れが治まります。しかし完治しているわけではないので、この時期に無理をすると症状が重篤化することになります。装具装着をおこない徐々にトレーニングを始めてください。

軽度であっても完全復帰までは1~3ヶ月と考えてください。その治療期間中に、筋力を低下させないことが、復帰期間を短縮する重要なポイントです。

手術後:復帰まで3~8ヶ月

しかし、膝の前側を支える前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい:ACL)の断裂損傷は、手術を検討することになるでしょう。将来的にスポーツ復帰の予定がなければ、手術をしないという選択肢もあります。

成長期の手術は要注意!

手術を受ける場合、年齢的による考慮が必要です。成長期に手術してしまうと、その後の身長の伸びなどの成育に影響してしまうことがあります。手術のタイミングや成長段階を検討しなければいけません。

手術後3~8ヶ月のリハビリテーション

加えて、複数の靱帯が損傷してしまう場合にも、保存的治療か手術かを検討することになります。術後には、3~8カ月程度のリハビリテ―ションをおこない、筋力を評価したうえでスポーツへの復帰が可能です。

保存的治療になるのか、手術になるのかによっても完治までの期間が変わりますが、できるだけ早い段階で診断を受け、早期治療によって回復も早まります。

早期回復には筋力低下防止がカギ!

筋肉が2週間で28%減少!

早期回復では、治療期間中に筋力を低下させないことが重要です。デンマークのコペンハーゲン大学の研究で、平均年齢23歳の若者が2週間まったく足を動かさなかった場合、筋力が28%低下することが分かりました。またそれを回復するために、1週間で3~4回のトレーニングで6週間を要することも判明しました。

2週間での筋力低下
平均年齢 被験者数 筋力低下率 筋肉減少量
23歳 17人 28% 485g
68歳 15人 23% 250g
Andreas Vigelsø , Martin Gram , Caroline Wiuff , Jesper L. Andersen, Jørn W. Helge, Flemming Dela 

筋力低下が10分の1に減少!

2週間で筋力が3分の1低下し、回復には3倍の期間が必要だったということです。これが1ヶ月間や3ヶ月間、膝を固定された状態だとすれば、筋力回復だけでも3~9ヶ月を要することになります。

その筋力低下を防止策として、医療機関では痛みがなければ、少しずつ動かすように指導しています。さらに筋力低下を抑制する成分として「HMBカルシウム」が注目を浴びています。

ロイシンから体内合成される筋肉増強成分ですが、運動していないときの「筋力低下の抑制効果」が非常に高い成分としても知られています。厚生労働省が高齢者の筋力低下の抑制策として、高齢者施設でのHMBの摂取を推奨しているほどです。ぜひ筋力トレーニングをできない治療期間に活用してほしい成分です。

靱帯損傷を予防するために

一度、膝の靱帯損傷を起こすと、たとえ手術をしたとしても後遺症のような症状が残るケースもあります。また、再発してしまうこともあるため、できるだけ予防できるような対策を取っておきましょう。

ストレッチとトレーニングで膝靱帯を守る

靭帯周辺の筋力アップ

靱帯損傷を予防するには、ハムストリングスのトレーニングが役立ちます。チューブを使って膝の曲げ伸ばしをして負荷をかけるレッグエクステンションや、膝立ちの状態から状態を倒すロシアンハムストリングスなどを日々のトレーニングに取り入れてみましょう。

膝の柔軟性アップ

準備体操として下肢のストレッチをしっかり行うことも大切です。また筋肉や筋膜の柔軟性を高めるため、ひざの筋膜リリースを取り入れることで、柔軟性が格段にアップします。

靱帯を維持するサプリメントの摂取

靭帯と腱の成分比
靭帯 大動脈 軟骨
コラーゲン 85.3% 16.4% 29.5% 52.5% 25.6%
エラスチン 5.3% 75.3% 33.8% 0.0% 0.0%
プロテオグリカン 2.6% 1.2% 4.2% 32.8% 0.2%
無機物 1.3% 1.2% 2.9% 4.9% 77.5%
参考資料「奇跡の素材 プロテオグリカン」弘前大学プロテオグリカンネットワークス/小学館

靱帯は骨と骨をつなぐ結合組織であり、コラーゲン繊維を(ファイバープロテインともいう)多く含む構造となっています。普段の食事のなかで、タンパク質の摂取量が少なかったり、体内でのコラーゲン産生力が低下していたりすると、靱帯そのものが劣化または修復遅滞に陥る恐れがあります。

また靭帯成分として「エラスチン」も注目されています。エラスチンも「ファイバープロテイン」の一種で、コラーゲンによる靭帯繊維を束ねる役割をしています。食事としてタンパク質やコラーゲンを多く含む食材を取り入れるとともに、スポーツ前後に手軽に摂取できるサプリメントを活用するのもよいでしょう。

まとめ:予防も早期回復も、日々の習慣から

接触や事故などで突発的に起こる靱帯損傷ですが、必ずしもすべての人に起こるわけではありません。また受傷した後も、回復に個人差がでてしまうのも事実です。そのちょっとした差は年齢だけでなく、日々の予防や受傷後のケアが影響します。スポーツ人生を楽しむために、入念なケアを実践したいものです。

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