アスリートの免疫力を高める食べ物6種類

免疫を高める納豆

 

スポーツ選手の免疫力は、常に変化しています。高強度の運動、疲労やケガ、睡眠不足やストレス、多くのウィルスにさらされ免疫力は低下します。また激しいスポーツをするスポーツ選手は、上気道感染(風邪)にかかるリスクが高まります。免疫力を高めるためには、適度な運動、休養、栄養をとることがとても重要です。ここでは効率的に免疫力を高める食べ物をご紹介します。

食事の基本

免疫を高める唯一の食品はない!

まず踏まえておきたいのが、食品には「これだけを食べていれば健康になれる」「これだけを食べていれば免疫力を高められる」「これだけを食べていれば免疫力が上昇して、インフルエンザや風邪などの感染症にかからない」というものなどは、ないということです。

健康に良い食べ物はたくさんありますが、そのうちのどれ一つとして「この食べ物だけを食べていればOK、この食べ物だけを食べていれば免疫力を高めることができる」というものはありません。免疫力を高めるためには、バランスよく食べ物をとることが何よりも大切です。

それぞれの栄養の役割が違う!

アスリートは良質なアミノ酸(たんぱく質)の摂取に、心を砕くことが多いと思われますが、これも「アミノ酸(たんぱく質)だけを食べていればよい」というものではありません。タンパク質を代謝するには、ミネラルやビタミンは必須です。栄養にはそれぞれ役割があるので「バランス」ということになります。

ちなみに「白血球を増やす食事」がしばしば話題にあがりますが、現在「白血球そのものを増やす食べ物」はありません。免疫を高める食べ物とは、免疫細胞が活性化しやすい環境をつくる食べ物のことです。

免疫力を高める食べ物

免疫を高めるには「良質な睡眠(休養)」「体温の調整」「バランスのとれた食事」などが重要です。その中でもここでは「免疫を高める食事」を中心にお伝えしていきます。

体に良いといわれる食べ物(栄養素)はたくさんあります。その中でも、免疫細胞の7~8割を抱える腸の環境を整えることが、もっとも重要とされています。ここでは腸内環境を整える食べ物をご紹介します。

  1. 発酵食品(生菌と死菌)
  2. 食物繊維(水溶性食物繊維)
  3. ポリフェノール(カテキンなど)
  4. ビタミンACE+B群
  5. 5つのアミノ酸(グルタミン・アルギニンほか)
  6. ミネラル群(マグネシウム・カルシウム+)

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発酵食品

善玉菌が腸内で活躍

腸内環境を整える代表的な食べ物として、乳酸菌を多く含む発酵食品「ヨーグルト」が有名です。乳酸菌はもっともよく知られた善玉菌で、免疫機能と深い関わりがあります。その他、納豆、発酵みそ、ぬか漬け、麹、本場のキムチなども、善玉菌を増やしてくれる優秀な食べ物です。

生菌「プロバイオティクス」

生きたまま腸に届き働く乳酸菌やビフィズスは「プロバイオティクス」と呼ばれます。生きた乳酸菌が腸に届くと(主に)乳酸を作り出し、腸内環境を酸性に傾けることができます。また酢酸そのものの抗菌作用で悪玉菌を抑制します。

乳酸菌にはさまざまな々種類があり、菌によって「整腸作用」「免疫強化」「アトピーの改善」「口内環境の改善」「内臓脂肪低減作用」などの効果が期待できることが報告されています。

死菌「バイオジェニックス」

生きた菌を含まない発酵乳や乳酸菌は「バイオジェニクス」と呼びます。プロバイオティクスのように腸内フローラに影響することなく「免疫強化」「コレステロール低下作用」「血圧降下作用」などの働きが期待できることが報告されています。

このように、生きた菌と死んだ菌は働き方がちがいます。そのため、「生きている乳酸菌」をとることにとらわれる必要もありません。なお、納豆や味噌といった、日本古来の発酵食品もまた効果を示します。

参考:「乳酸菌の生理機能とその要因」日本調理科学会誌 Vol. 46,No. 2,129~133(2013)

食物繊維

免疫環境を整えるには、食物繊維を多く含む食べ物も効果的です。食物繊維には、水溶性食物繊維(水によく溶ける)ものと不溶性食物繊維(水に溶けにくいもの)があり、特性が少し異なります。

水溶性食物繊維の効果

水溶性食物繊維は、血清コレステロールや血糖値の上昇を抑える効果、腸内で発酵・分解されることにより、善玉菌を増やして腸内環境を改善してくれる効果が期待できます。腸内細菌のエサになるわけです。

不溶性食物繊維の効果

不溶性食物繊維は、水分を吸収して便の硬さを増し、腸内で発生した有害物質を吸着し排泄するなどの働きがあります。そのため、便秘の予防・改善、大腸がんの予防、痔疾の予防効果などが報告されています。

いずれも整腸効果を示し、善玉菌を増やす役目を担っていることには変わりがありません。おなじみの「ゴボウ」によく含まれていますが、枝豆やモロヘイヤ、それから切り干し大根などにもよく含まれています。

3.ポリフェノール

ポリフェノールも、健康によい成分と知られています。その種類は8000以上もあるといわれており、強い抗酸化作用があり、免疫システムを弱める外的刺激(紫外線など)から身を守るために役立つものです。

緑茶のカテキン

ポリフェノールの一種である茶カテキンでの「うがい」や「緑茶の飲用」によって風邪やインフルエンザへの予防効果が期待できることが報告されています。このため、ポリフェノールは「免疫を高めること」を考える人にとって、非常に有用なものとなります。

ポリフェノール食材

実際、ポリフェノールを多く含むコーヒーを毎日2杯程度飲んでいた人は、紫外線によるシミの発生率が抑えられたという統計も出ています。ポリフェノールを含む食材といえば、赤ワインやチョコレートなどが特に有名ですが、上記でも述べた通り、ポリフェノールには無数の種類があります。

そのため、大豆やタマネギ、ショウガなどにも各種のポリフェノールが含まれているので、これらの食材を積極的にとっていくのもよいでしょう。

4.ビタミンACEとB群

ビタミンは、私たちが健康的な生活をしていくために必要不可欠なものです。そのなかでも、ビタミンA・ビタミンC・ビタミンEは免疫系に作用するものとしてよく注目されます。

ビタミンACE

ビタミンAは、感染症の原因となるウィルスによく攻撃される喉の粘膜などを強くしてくれる成分です。免疫細胞の働きを活性化させる効果もあるもので、ニンジンやブロッコリー、レバーなどにたくさん含まれています。

ビタミンCは、美容のための栄養素としてもよく注目されます。高い抗酸化作用を持ち、ウィルスが体内で増殖することを防ぐ役割を持つインターフェロンの生成に寄与しています。レモンに含まれるイメージが強いものですが、実はパプリカなどによく含まれています。

ビタミンEは、血行促進に役立ったり、皮ふの強化に役立ったりしてくれるものです。あんこうの肝やいくら、すじこなどによく含まれますが、これらを日常的にとるのはかなり難しいでしょう。そのため、量を食べることができてかつ安価で調理もしやすい、たらこやかぼちゃなどから取り入れるのが現実的です。

ビタミンA・ビタミンC・ビタミンEは、それぞれ個別でとっても効果を示しますが、3つを合わせてとることで相乗効果が期待できます。そのため、特に「ビタミンACE(エース)」と呼ばれて重要視されています。

ビタミンB群

「免疫力を高めるもの」とは少し外れますが、アスリートにつきものの「疲労」を回復させる成分として、ビタミンB2があげられます。豚肉のレバーや牛のレバーなどによく含まれるもので、納豆や卵黄にもよく含まれています。エネルギー消費量が増えるほど、必要量が増加するビタミンでもあり、人間の成長や細胞の再生に関わるものです。

なお、同じ「ビタミンB」に分類されるものとして、「ビタミンB1」もあります。ビタミンB1が足りない体は筋肉痛や疲労がたまりやすくなるため、これも重要な成分だといえます。

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5つのアミノ酸

筋肉の土台となるアミノ酸(たんぱく質)も、アスリートにとっては必須の栄養素だといえます。一般的ですが、低カロリーで低価格な良質なアミノ酸(たんぱく質)がとれるものとして「鶏肉」があげられます。

アミノ酸単体として免疫力を高める成分として「シスチン」「テアニン」「グルタミン」「アルギニン」「ヒスチジン」があります。特に運動後やケガの早期治癒には「グルタミン」が推奨されています。

  • シスチンが多い食べ物:肉類、魚介類、ナッツ類など
  • テアニンが多く食べ物:緑茶など
  • グルタミンが多い食べ物:海藻、大豆、肉類、魚介類など
  • アルギニンが多い食べ物:魚介類、肉類、ナッツ類、大豆食品など
  • ヒスチジンが多い食べ物:カツオ・サバ・いわしなどの青魚、鶏胸肉、豚赤身など

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マグネシウムなどのミネラル類

免疫機能の要になるのがミネラルです。免疫細胞とミネラルには、数多く関係性があります。まずカルシウムは、免疫細胞のスイッチの役目をしています。カルシウムが細胞内に侵入することで細胞スイッチがオンになり、マグネシウムがカルシウムを連れ戻すことでオフになります。

ミネラルバランスが崩れることで、スイッチの切り替えに異常が起こります。免疫系でスイッチが入りっぱなしになると、ヒスタミンという炎症物質を放出し続け、ケガの治癒の遅れやアレルギーを起こします。

またミネラル不足によるエネルギー代謝の低下は、体温の減少につながります。体温が0.5℃下がると、免疫は30%低下するともいわれるなど、ミネラルはさまざまな側面から免疫機能に影響します。

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免疫を高める料理例

免疫を高める食べ物

料理の例

このように「体によい食材」をとりあげても「どのように作っていったらよいかわからない」「レシピが思い浮かばない」ということもあるでしょう。そこでここでは一例として、以下の料理を提案します。

  • 切り干し大根と油揚げの和え物
  • ニンジンと鶏肉、パプリカの炒め物
  • かぼちゃの煮物(糖類はオリゴ糖などを使用)
  • 納豆の黄身和え
  • ヨーグルト(糖や香料の入っていないもの)
  • みそ汁(みそはグルテンフリーの発酵みそ)
  • 玄米(無農薬、できれば発芽玄米)
  • キムチ納豆(キムチは浅漬けではなく、発酵キムチ)

よくある「日本の食卓」です。しかしこれは、「免疫を高める食べ物で構成された食卓」です。切り干し大根と油揚げの和え物では食物繊維がとれますし、メインディッシュとなるニンジンと鶏肉、パプリカの炒め物ではビタミンAとビタミンC、それからアミノ酸(たんぱく質)をとることができます。

かぼちゃの煮物をそえればビタミンEがとれますし、納豆の黄身和えは発酵食品であると同時にビタミンB2をも摂取することができるものです。そして、これも発酵食品であるヨーグルトで、善玉乳酸菌を体に取り入れることができます。

アスリートに求められる食事

このように見ていくと、免疫を高める食べ物というのは、決して難しいものではないことが分かります。ここでポイントになるのは「食材と調味料の質」です。食材や調味料によっては、免疫低下や隠れアレルギーによるコンディションの低下などの原因になります。

免疫を高める食べ物のまとめ

免疫細胞は食べ物から作られ、食べ物によって活性化します。何をどう食べるかで、おのずと免疫力に違いができています。免疫を高める食べ物の例として、

  • 発酵食品:ヨーグルト、納豆、ぬか漬け、キムチなど
  • 食物繊維:ごぼう、切り干し大根など
  • 抗酸化食品(ポリフェノールなど):緑茶、玉ねぎ、生姜、赤ワインなど
  • ビタミン類:特にビタミンC・E・A
  • アミノ酸:グルタミン、アルギニン、シスチン、テアニン、ヒスチジンなど
  • ミネラル類:マグネシウム、カルシウム、その他総合的に

免疫を高める食べ物は、それだけを食べていれば良いということではありません。栄養素は互いに協力して働いているので、バランスのとれた食事を心がけてください。

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