スポーツ選手はなぜ風邪を引きやすいのか?免疫を高める運動とケア方法

スポーツ選手と風邪

 

普段から運動をしているアスリートに、風邪の感染が多いのは意外ですよね。スポーツをする人は元気で健康的、免疫も高まっていると思われがちです。しかし過剰な運動は免疫を低下させ、風邪やインフルエンザ、感染症などにかかりやすくしていたのです。なぜ運動によって風邪が引きやすくなるのか?免疫が低下するのか?をお伝えするとともに、免疫を高める運動方法やケア方法も解説します。

どうして人は風邪を引くのか?

「部活でしっかり運動をしているし、休日も自主的にトレーニングを行っている。運動をしていると健康になる!というイメージがあるが、なぜ風邪をひいてしまうのか?」と疑問に思う人は多いでしょう。

この疑問をとくためには、まずは「人はなぜ風邪を引くのか」を考えなければなりません。

風邪をひく原因

風邪は、もっとも一般的な感染症のうちの一つです。人が風邪をひく「原因」はさまざまです。ただ「ウイルスが体に入り込む、それが増えることで起こる」という文章で解説することができます。体内に侵入したウイルスや細菌は白血球が退治しますが、免疫力が低下すれば白血球の活動が弱くなります。

発熱や鼻水、たんなどの風邪の諸症状は、実は白血球が活躍しやすい環境づくりのため、あるいは白血球がウイルスと戦った結果で起きます。熱や関節痛は体を守り、健康的な状態に保つための工程なのです。

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風邪を引きにくい体とはどういうものか?

免疫機能の高さ

一般的な感染症である「風邪」ですが、これにはかかりやすい人と、かかりにくい人がいます。免疫機能が高い人の場合は、同じウイルスであってもブロックすることができます。この「免疫機能を高める方法」としてよく取り上げられるのが「運動」です。

免疫力の向上には、運動が欠かせません。人間の体は体温が高い状態にあると免疫が活躍しやすくなります。しかし「体温」は、運動をしていないと低下する傾向があります。現代人は50年前と比べると平均体温が0,7度低く、これは運動量の低下によるとされています。

運動と免疫

もう少し、この「運動と免疫」について踏み込んでいきましょう。私たちの免疫細胞には、いくつかの種類があります。そのなかで、もっとも初期の段階で働いてくれるのが「NK細胞」です。このNK細胞はがんと戦う力も持っており、人間の体において非常に重要な細胞です。

白血球一覧

このNK細胞は、適度な運動をしている人と相性がよい細胞です。適度な運動をすることで、体内のNK細胞を増やすことができるとされています。このため、毎日の生活のなかに適度な運動を組み込んでいる人は、運動不足の人に比べて免疫力を上げることができ、風邪を引きにくくなるのです。

なぜスポーツ選手は風邪を引きやすいのか?

このようなことを聞けば「部活動などでしっかり運動をしている人は、もっと免疫力が高まり風邪を引きにくくなるのではないか」と考えたくなります。

激しい運動で免疫力が低下!

唾液の分泌が低下する!

免疫機能には「まったく運動をしていない」よりも「適度な運動をしている」方が風邪を引きにくく、「激しい運動をしすぎる」と逆効果になる特徴があります。これにはきちんとした理由があります。

私たちの体は、風邪にかかることを防ぐために「唾液」を分泌します。この唾液にも免疫物質が含まれているのですが、激しい運動によって、この免疫物質の値が大きく下がります。

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免疫の消耗が激しい!

運動によって酸素の摂取量が増えます。空気中には多くの細菌やウィルスが浮遊しており、それを大量に吸い込むことで免疫細胞の消費が激しくなります。また寒い時期には、寒気によって肺が冷やされるため、体の中心温度を下げたり、体温を上げるためにエネルギー代謝が活発化します。

運動強度が影響する!

「運動不足の人」「適度な運動をする人」「激しすぎる運動をする人」に分けて、それぞれ風邪にかかりやすくなるリスクを調べた場合、そのグラフはきれいなJカーブを描きます。「適度な運動をする人」がもっとも風邪にひきにくく、「運動不足」の人が平均的、そして「激しい運動をする人」は運動の強度が高まるにつれて風邪をひきやすくなることが分かっているのです。

上気道感染リスク

ちなみに、唾液中にはIgA(ウイルスなどに対抗する力を持つもの)が含まれていますが、疲労がたまっている人は、この値も低くなります。疲労を溜めこむことで、予防のための成分も低下するわけです。

「適度な運動」とはどのようなものか

では「適度な運動」とはどのようなものなのでしょうか。それはジョギング、ランニング、ウォーキングなどの軽い運動を指します。会話しながら楽しめる有酸素系の運動強度で、ダイエットにも効果的です。

ちなみに、フルマラソンなどのように長い距離を走る運動は「適度な運動」を超えると判断されます。ここまで自分を追い込んだ場合、風邪などの感染症にかかるリスクは高くなります。

健康目的で運動を行うのであれば、週に3日以上の「適度な運動」を行うのがよいでしょう。適度な運動はストレス解消にも役立ちますし、心肺機能の向上などにも繋がります。

ただ部活やプロの世界では「適度な運動」というわけにはいきません。そのため同時に「免疫力を落とさない・免疫力を高めるための対策」を行う必要があります。

免疫力を高める生活習慣とは

免疫力を高める生活習慣についてみていきましょう。大きくは①食事、②睡眠、③入浴に分けられます。また呼吸法によっても免疫力を高めることができます。*風邪をひきやすい人が3日で変わる呼吸法!

食事による免疫力向上

免疫のうちの6割近くが腸に存在するため、免疫力の向上には食事の見直しが必須です。バランスよく食事をとるのが基本ですが、特に免疫向上に役立つ食品をご紹介します。

マグネシウムなどのミネラル類

細胞が働く基礎栄養素であるミネラル類は、免疫向上のための筆頭栄養素です。中でもマグネシウムは、ミネラルバランスを整えたり、免疫細胞が活動するトリガーになるカルシウムのコントロールをしています。

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ビタミンCやEなどの抗酸化物質

ビタミンC(水溶性)やビタミンE(脂溶性)は抗酸化物質として有名です。運動などで身体が疲れていると、血液は酸性に傾きます。酸性状態では免疫細胞が活性化できず、それを還元するのが抗酸化物質です。

代謝機能や神経伝達を助けるビタミンB群

免疫力を高めるには、エネルギー産生や免疫細胞の合成が急がれます。それらの代謝をサポートしているのが「ビタミンB群」です。神経伝達にもかかわるので、素早い免疫機能の始動にも貢献しています。

免疫を向上するアミノ酸

大手アミノ酸メーカーの研究では、シスチンとテアニンをとることで風邪をひく人が減ったと報告しています。またグルタミン、アルギニン、ヒスチジンは、免疫システムを正常に修復するとされています。

腸を元気にする乳酸菌などの善玉菌

免疫細胞の6~7割が腸にあることから、善玉腸内細菌の活性は欠かせません。1000種類、100兆個ある腸内細菌はアレルギーや様々な病気とも関係しているので、腸内環境を整える乳酸菌などの活用は必須です。

参考:NHKスペシャル 「人体」万病撃退!腸が免疫の鍵だった!

食物繊維やポリフェノール類

腸内細菌は食物繊維をエサにするので、その摂取は免疫力の向上に役立ちます。腸の炎症を抑えるポリフェノール類も、腸内環境を整える上で重要です。

睡眠による免疫力向上

ストレスがたまると、免疫は低下します。そのストレスを解消するもっとも簡単な方法は「睡眠」です。睡眠不足の生活は、免疫力の低下を招きます。たった1日だけ夜型の生活をしただけでもそうなります。良質な睡眠は、体の疲れを癒すだけでなく、心を健全な状態に保つためにも役立ちます。

肌や健康を維持するためには、22時~2時のゴールデンタイムに、睡眠開始90分のノンレム睡眠(熟睡)をあてるのがよいとされます。現在は「この時間以外に寝ていても構わない」とする説もありますが、世界最高のスタンフォード大学睡眠研究所の見解でもあります。無理がない範囲で実施しましょう。

また最適な「入眠モード」の工夫により、深い眠りにつくことができます。間接照明や静かな環境、適切な湿度や温度(湿度50パーセント程度、室温は17度前後)、入浴時間も重要な要因です。

入浴による免疫力向上

入浴はストレス解消効果による良好なホルモン分泌、入眠促進効果、体温上昇による免疫向上効果や疲労回復効果が期待されます。シャワーではなく、しっかりと湯船に浸かることが重要です。

湯温は38度~40度程度で、半身浴なら20分程度、全身浴なら10分~の入浴が理想です。シャワージェルや入浴剤などを使うと、さらにリラックスしやすくなります。しかし睡眠の妨げにならないように、入眠の90分前にはあがるようにしましょう。

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