「テニス肘」はラケットを使うスポーツで多く発生する肘関節の障害です。テニス、バトミントン、卓球、ゴルフなどのスポーツで多く発症します。一般的な治療法は、アイシングと安静にすることです。しかしそれだけでは回復が遅れ、再発リスクもあります。テニス肘を早期に回復させ、再発を防止するには・・・
目次
テニス肘の概略
テニス肘とは
肘関節の障害
テニス肘は、ラケットを使うスポーツで多く発症する「肘関節の障害」です。正式名称は「上腕骨外側上顆炎」(じょうわんこつがいそくじょうかえん)といい疼痛性運動障害の総称です。
スポーツは固有の反復運動を行うため、特定部位に障害が起こりやすくなります。テニス肘は肘の外側に起こる障害で、内側の障害を「野球肘」または「フォアハンド・テニス肘」と呼びます。
テニス肘の症状
症状はものを掴んで持ち上げたり、タオルを絞ったりするときに、肘の外側から上腕にかけて痛みが発生します。中年のテニス愛好家に多いため「テニス肘」といわれますが、スポーツ以外でも起こる障害です。
テニス肘の原因
テニス肘の原因とは?
手首を甲側に曲げる時に、強い衝撃を継続的に受けることで、前腕外側の伸筋群と肘の付着部が損傷し、修復不完全な状態になる亜急性障害です。
例えばテニスのバックハンドで受ける肘への衝撃が、連続して起こる状態です。肘の腱炎でもあり中年に多く発症することから、3つの要因が関わっていると思われます。
発症率を高める3つの要因
- オーバーユース
- 腱の弾力性低下
- 修復力の低下
1:オーバーユース
通常の生活において「上腕骨外側上顆」が酷使されることがありません。普段使わない(鍛えられていない)部位に、強度な衝撃を断続的に与えると損傷が激しくなります。オーバーユースは年齢や普段の体の使い方によっても基準が変わります。
2:腱の弾力性低下
腱を構成する成分の85%はⅠ型コラーゲンで、残りがエラスチンやプロテオグリカンなどです。Ⅰ型コラーゲンとは繊維状のタンパク質の一種で、弾力性や強靭性のもとになっています。Ⅰ型コラーゲンは加齢とともに代謝が低下し機能性が低下します。
3:修復力の低下
腱や骨には痛覚神経や血管がありません。痛みの発生はそれらを包む筋膜で起こっています。つまり筋膜を活性化させることで、修復作業を効率化することができると考えられます。この筋膜割はⅠ型コラーゲンで構成されています。また軟骨や腱の周囲は、細胞外マトリックスによって酸素や栄養を届けますが、その主要成分もⅠ型コラーゲンで構成されています。
テニス肘3つのチェック方法
テニス肘のチェックは、肘痛の原因がハッキリしている場合は判断しやすくなります。もしも病気や骨折だった場合、放置すると重症化することがあります。
チェアテスト
立った状態から、椅子の背もたれ上部をわしづかみします。そのまま持ち上げ肘に痛みがでれば「テニス肘」と思われます。もしも、重さに不安や適当な椅子がない場合は、バックやペットボトルを上からわしづかみしたまま、持ち上げてみましょう。
中指伸展テスト
手の甲を上に向けたまま中指を伸ばします。反対の手で中指を下に向かって押さえつけます。伸ばした中指を上げようとしたときに、肘に痛みがでれば「テニス肘」です。テニス肘は、伸筋群の中でも「短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)」がもっとも影響し、それは中指に直結しているからです。
手関節伸展テスト(トムゼンテスト)
軽くこぶしを握った状態で、手の甲を上にして手首を伸ばします。反対の手でそのこぶしを下向きに押さえつけます。こぶしを上げようとした時に肘に痛みがでれば「テニス肘」です。
痛みが強い場合
肘の痛みには様々なものがあります。特に中学生ぐらいまでは、成長軟骨部の損傷である「骨端症」、骨から軟骨の一部がはがれる「離断性骨軟骨炎」、「剥離骨折」や「疲労骨折」の恐れもあるので、痛みが強い場合は病院でレントゲン検査を行ってください。
テニス肘の治し方
一般的な対処療法
テニス肘の治療法には、痛みに対する5つの「対処療法」があります。
- 保存療法(運動をやめ安静療法)
- サポーター(肘可動制限)
- アイシング(患部の冷却)
- ストレッチ(筋肉の柔軟性維持)
- 薬物療法(鎮痛剤の服用や注射)
対処療法で回復が遅れる!?
ひじ痛は自然治癒力によって治すのが基本で、医療行為で完治させることができません。対処療法は痛みを抑え、悪化させないのが目的ですが、自然治癒力を低下させ回復が遅れることもあります。
アイシングは腫れや熱には有効ですが、血流を悪化させ修復作用が遅れます。また投薬による鎮痛効果も回復を遅らせる作用があります。テニス肘の早期回復には、自然治癒力をアップすることが大切です。
テニス肘が早期回復する5つのっポイント
医療行為によって、テニス肘を治すことはできません。早く治すには、人間が本来もっている治癒機能を高めることが基本です。一般的な療法に頼らないことを前提に、早期回復の5つのポイントをお伝えします。
1、運動制限
さらに症状を悪化させる動作は避けてください。つまり原因動作を一時的に停止することです。また無駄な動きや不意な刺激を制限するために、サポーターなどによって肘の可動域を制限しましょう。症状のピークが低くその期間が短いほど、完治にかかる時間が短縮できます。
2、温めて血流アップ
「冷やすの?温めるの?」と迷うことがあります。腫れや熱を抑えるには「冷やす!」、一方早期回復には「温める!」です。冷やすことで血管が収縮して血流が低下し、腫れや熱を一時的に抑え込むことができます。腫れや熱は修復現象であり、血流が低下することで修復物質が減少します。
まずは、強い痛みがあるときはアイシングをして、腫れと熱を抑え痛みを軽減します。数時間から1日ぐらいして強い痛みが消えれば、次に「温め」に変更します。血行をよくすることで、多少痛みがでても早期回復につながります。長期的な冷却は、回復が遅れ後遺症が残ることもあります。
3、ストレッチで細胞活性化
動かすことは早期回復につながります。「1、運動制限」でサポーターなどで運動制限といっていますが、これは悪化させる動きを制限するということです。
ストレッチや筋膜リリースを行うことで、痛みや血行不良の直積的原因である筋膜を正常化させます。
損傷部位である腱には、血管や痛みを感じる痛覚神経の終末(侵害受容器)がありません。それを包んでいる筋膜に備わっていて、炎症により発生する発痛物質や酸欠信号を痛覚神経が受け取り、それを脳が判断して痛みを発生させます。ストレッチは筋膜のゆがみを修正し、血行を改善することで、より多くの酸素や修復物質の供給し、不要物質の回収をサポートします。
4、適切な栄養供給
腱の成分の85%はⅠ型コラーゲンです。筋膜成分も9割を占めます。また毛細血管から、酸素や栄養を運び、老廃物を運び出す細胞外マトリックスの主成分もⅠ型コラーゲンです。
つまりⅠ型コラーゲンの活性化が、修復作業の効率化に直結するのです。
5、充分な休息
修復の一番の基本は休息です。つまり睡眠です。
修復作に欠かせないのが「成長ホルモン」の存在です。成長ホルモンはタンパク質の代謝を促進させ、損傷した器官を修復していきます。成長ホルモンは寝つきの3時間が最も多く分泌されます。
*参考文献:「スポーツ障害」著者 鳥居俊/ベースボールマガジン社、「スポーツ救急医学」著者 興水健治/ベースボールマガジン社、「スポーツ外傷・障害とリハビリテーション」著者 魚住廣信/NAP、「コラーゲン・グルコサミン混合液の摂取によるヒト関節マーカーの改善」日本ハム中央研究所 清水宗茂ら、「骨、関節軟骨の老化とコラーゲン」慈恵会医科大学整形外科 T.Kajiwara教授ら、「天然素材コラーゲンの機能」日本皮革研究所所長、「コラーゲンペプチドの食品機能性」城西大学薬学部医療栄養学科食品機能学 Yoshifumi Kimiraら、「軟骨・骨に寄与するコラーゲンペプチド」城西大学薬学部医療栄養学科食品機能学 君羅好史ら、
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