
筋膜のゆがみや損傷は、筋肉の痛みや回復の遅れ、肩コリや腰痛、運動機能の低下などの原因になります。それを解消する筋膜リリースには、4つのアプローチがあります。
「筋膜はがし」ともいわれるこの方法は、運動をする方以外でも、日常的に運動不足の方、肩コリや腰痛、その他関節痛や疲労が溜まりやすい方の体質改善にも効果的です。
目次
筋膜リリースの基本
筋膜リリース4つのアプローチ
1、基本的な筋膜リリース法
日常的なケアのために、毎日行いたい筋膜リリース法です。疲れの早期解消、筋肉トラブルの防止、内臓機能の活性化などに役立つ体調管理法です。詳しくは、このページの後半で解説しています。
2、痛みやコリを解消する筋膜リリース法
筋肉に痛みがある場合や予防のために行う筋膜リリース法です。肩コリや腰痛、筋肉のハリなどの解消にも効果的な方法です。詳しくは「痛みやこりに効く筋膜リリース・プログラム」で解説しています。
3、疲労感や不眠を解消する筋膜リリース法
寝ても疲れがとれない、なかなか寝付けない、やる気がでない、風邪が治らない、精神的に落ち込みやすいなどに効果的です。詳しくは「体調不良に効く筋膜リリース・プログラム」で確認ください。
4、競技別の筋膜リリース法
スポーツ競技によって、使う筋肉が異なります。スポーツをされる方は基本の他にも、競技別の筋膜リリースを行うことをオススメします。「競技力アップと怪我予防の筋膜リリース」で解説しています。
★筋膜リリース法は、全て症状に万全ではありません。原因が筋膜のゆがみ以外のケースでは改善できず、症状を悪化させる恐れもあります。筋膜リリースを常に行うことで、その違いを判断しましょう。
筋膜リリース 基本の3ポイント!
1、押し伸ばし
筋膜リリースは『押しながら伸ばす』が基本です。
通常のストレッチでは、限界まで伸ばしても、筋肉、靭帯、腱が伸びているだけで、筋膜は伸び切っていません。
押しながら伸ばすことで、筋膜のシワが伸ばされます。
2、面で押す
筋膜を押し方は、点ではなく面で、筋膜を伸ばすイメージで行います。あくまでも筋膜を伸ばすことが目的です。手を使う場合、人差し指~小指までの4本の腹の部分で、力を入れず軽く押していきます。
道具を使うと、より効果的に行えます。丸めたバスタオルや硬式テニスボール、またはストレッチ用のポールが有効です。また排水管用の塩ビのパイプに、タオルやウレタンを巻き付けてもリリースポールの出来上がりです。
3、最低10秒間
1ヶ所あたり最低10秒間キープします。できれば20~30秒行うとさらに効果的です。それ以上はあまり効果が望めないので、1ヶ所の時間を長くするより、セット数を増やしてください。1ヶ所10秒なら、一通り行っても1セット5分程です。さらに効果を高めるには入浴で身体を温めるといいでしょう。
ただし、けして痛くしないでください。筋膜を傷つけると逆効果になることがあります。マッサージの揉み返しによる痛みも、筋膜の炎症と考えられ、筋膜のゆがみを増やす恐れもあります。
*筋膜の詳しい説明は「筋膜リリース大特集!」をご確認ください。
筋膜リリース4ブロック編
筋膜4つのブロックの実施法!
体内の全器官を包む筋膜は、すべて連結しています。その中でつながりの強さを基準に、4ブロックに分けました。
- フロントブロックの筋膜リリース法
- アームブロックの筋膜リリース法
- サイドブロックの筋膜リリース法
- バックブロックの筋膜リリース法
1、フロント・ブロックの筋膜リリース法
右手を後手に、右足の甲を引っ張り上げます。そのとき伸びている腹筋、股関節、太もも、すね、甲部分がフロントブロックです。
特に太もも前部にある大腿四頭筋は、人体最大の筋肉群で、骨格やほかの筋力低下をカバーするため負担大です。スポーツ以外でも、座りっぱなしや運動不足による股関節のゆるみでも、大腿四頭筋に大きな負担をかけています。
フロントの筋膜リリースの効果
骨盤まわりに影響がでやすいため、腰痛の緩和、股関節痛の緩和、ヒザ痛の緩和、ポッコリお腹、太りやすい方、座り仕事で運動不足の方などにオススメです。
①お腹の筋膜リリース
両肘をついた状態で、鳩尾の右側あたりにタオルポールをあて、反対側の左ヒザを曲げます。鳩尾右側から右骨盤上まで、ゆっくりとタオルポールを移動させます。
*片側の鳩尾~骨盤あたりまで最低10秒
②股関節~太ももの筋膜リリース
タオルポールを右脚のつけ根にあわせ、両手を床について上体反らしながら、大腿四頭筋を伸ばします。タオルを脚のつけ根からヒザまでゆっくり移動させます。
*片側の股関節~ヒザまで最低10秒
③ヒザ下の筋膜リリース
つま先を立てた正座状態から、右のスネにタオルポールをあてます。両手を床につけたまま、ヒザから足首までをゆっくりと押し伸ばしていきます。
*片側のヒザ下~足首まで最低10秒
④足の甲の筋膜リリース
③の姿勢のまま、右足の甲にタオルポールをあてます。右手で右足先を引っ張り上げながら、甲部分を伸ばしていきます。
*片側の足の甲で10秒
⑤反対側も同様に行います。
必ず、右側(左側)が一通り終わってから反対側を行ってください。同じフロントブロックでも、左右それぞれの関連性が強くなっています。
2、アームブロックの筋膜リリース法
左手を壁についた状態で、上体を右側に捻り、右手で頭部を右側に引っ張ります。その時、伸びている左首筋、左胸、左腕、左手首がアームブロックです。
ここは疲れがたまりやすい部分で、頭痛、肩こり、腰痛、精神不安などに関係します。首筋にある僧帽筋や胸鎖乳突筋は、同じ筋膜に包まれていて、そこに自律神経系でリラックスや胃腸の働きを司る「迷走神経」が通っています。
この筋膜の硬縮や癒着は、疲労回復やリラックスを妨げます。また一般的な首揉みや肩揉みでも、迷走神経を傷つける恐れがあります。一方、筋膜リリースは神経に悪影響を与えることはありません。
アームの筋膜リリースの効果
腰痛、肩コリ、頭痛などの解消。リラックス効果。不眠の解消。デスクワークが多い方にもおすすめ!
①首側面を伸ばす
右手で頭を右にゆっくり倒していきます。首側面にある僧帽筋をリリースすることができます。
*そのまま10秒間キープ!
②胸鎖乳突筋を伸ばす
アゴを上げながら頭を右側に傾けます。親指以外の4本指(以下「4本指」という)を左耳裏(頭蓋骨の端)にあてて、軽く押しながら左鎖骨の内端に向けて、斜め下に押し伸ばしてきます。
*耳裏から鎖骨端まで10秒間
③斜角筋を伸ばす
左手の指先を下にして、斜め下の壁につきます。右手4本指を首の左側面にあて軽く押さえます。そのままの姿勢で、体をゆっくりと右に捻ることで、斜角筋がリリースされます。
*捻った状態で10秒間キープ!
④大胸筋を伸ばす
左手の指先を上にして、斜め上の壁につきます。右手4本指で左鎖骨の下あたりを押さえます。そのままの姿勢で、左大胸筋を伸ばすように、少しだけゆっくりと体を右に捻ることで、左側大胸筋がリリースされます。
*捻った状態で10秒キープ!
⑤反対側も同様に行います
片側(ここでは左側で説明していますが、逆からもOKです。)を一通り行ってから、逆サイドも同じようにリリースしましょう。
3、サイドブロックの筋膜リリース法
身体の両サイドの筋膜を伸ばします。右脚を後にして下半身をクロスさせます。両手を頭上にあげて、左手で右肘をつかみながら上体を左に傾けます。反対側も行います。
伸びている側面がサイドブロックです。この筋膜に硬縮や癒着があると、背骨や骨盤に歪みにより、左右どちらかの肩が下がったり、骨盤がズレたりします。
サイドの筋膜リリースの効果
左右のバランスを矯正します。肩の水平バランスや左右の腰の上下の傾き、背骨の歪みが解消されます。
①スネ外側の筋膜リリース
左側面を下に横向きになります。左ヒジをたて、左脚のスネの外側にポールをあてます。腰を少し浮かしながら、ポールを少しずつ転がし、スネ外側の筋膜を伸ばしていきます。
*片側のスネの外側全体を10秒かけて
②太もも外側の筋膜リリース
上記と同様な姿勢で、ポールを左太ももの外側にあてます。ポールを少しずつ転がしながら、左太ももの外側全体の筋膜をリリースしていきます。
*片側の太ももの外側全体を10秒かけて
③脇腹の筋膜リリース
左側面を下に横向きになります。ポールをお腹の側面にあてて、脇腹(腹横筋)の筋膜をリリースします。
*1回10秒
④脇下の筋膜リリース
上記の姿勢のまま、ポールを脇の下にあてて、脇下の筋膜をリリ―スします。
*10秒キープ!
⑤二の腕外側の筋膜リリース
上記の姿勢から、左腕を伸ばして、二の腕外側にポールをあてます。そのまま脇の下から肘にかけてポールを転がし、上腕二頭筋の筋膜をリリースします。
*脇の下から肘まで10秒
⑥前腕外側の筋膜リリース
上体を起こし、左腕の伸ばしたまま右手で左手を手前に引き寄せます。左前腕にポールをあてて、左手首から左肘にかけて転がします。前腕心筋群の筋膜をゆっくりとリリースしていきます。
*片腕手首~肘にかけて10秒
⑦反対側も同様に行います
片側(ここでは左側で説明していますが、逆からもOKです。)を一通り行ってから、逆サイドも同じようにリリースしましょう。
4、バックブロックの筋膜リリース法
床に座り両足を伸ばします。その状態から両手でつま先をつかみながら前屈します。限界まで伸び切ると、首、背中、腰、太ももの裏側、ふくらはぎが一体となって引っ張られます。その部分がバックブロックです。
慢性疲労や体調不良、姿勢が悪い方、体にゆがみを感じる方は、押さえておきたいポイントです。
●対象になる筋肉:脊柱起立筋群、殿筋群、ハムストリングス、腓腹筋など
バックの筋膜リリースの効果
体の背面には、健康を維持するうえで重要な骨、筋肉、神経があります。自律神経(心拍、血圧、呼吸、体温調整、代謝などをコントロール)は、背面から全身に広がっています。
この筋膜が硬縮すると自律神経が乱れ、頭痛、肩コリ、腰痛に影響するほか、慢性疲労、不眠、代謝低下、肥満などにつながります。
①足裏の筋膜リリース
左の足裏でポール(またはテニスボール)を踏み、前後に転がしながら足裏全体の筋膜をリリースしていきます。前後だけではなく左右にも傾けることで、より効果があがります。
*片方の足裏全体で10秒
②ふくらはぎの筋膜リリース
床に腰を下ろして、左脚を伸ばします。ポールを左足首の下にあてて、腰を軽く上げながらポールを膝下までゆっくりと転がします。ふくらはぎ部分の筋膜をリリースします。股関節を左右に動かすと、さらに効果がアップします。
*片方のふくらはぎで10秒
③太ももの裏側の筋膜リリース
上記の姿勢から、ポールを左脚太ももの下にあてます。そのまま膝下から脚の付け根あたりまで、ポールを転がすことで、ハムストリング部分の筋膜がリリースされます。脚を左右に振ると、より筋膜が伸ばされます。
*片方の太もも裏で10秒
④お尻の筋膜リリース
ポールをお尻にのせて、左脚を右ヒザで組みます。左のお尻に体重をかけて、臀部の筋膜をリリースしていきます。ヒザを左右に揺らしたり、曲げ伸ばしすることで、お尻全体の筋膜に効果がでます。
*片尻で10秒
⑤腰~背中~首筋の筋膜リリース
腰にポールをあてた状態から、両脚を伸ばして仰向けになります。両腕を頭の上で伸ばし、ポールを腰から首まで転がすことで、腰~首にかけての筋膜がリリースされます。左側に少し傾けることで、左側の筋膜がより伸ばされます。
*腰から首までを20秒かけて
⑥ 反対側も同様に
反対側も同様に行います。左側を中心に解説しましたが、右側から行っても問題ありません。大切なのはルーティンにすることで、それにより抜けなくしっかりと筋膜を伸ばすことができます。
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